[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more.. ]
看護師の仕事をしていると、治験をする患者さんの看護をすることもあると思います。
治験に興味を持った人は、「臨床開発モニター」への転職を考えてみると良いでしょう。
臨床開発モニターは、「製薬会社側の立場から、治験が治験実施計画書に基づいて、正しくスムーズに行われるように調整・管理・モニタリングする仕事」です。
臨床開発モニターに転職するメリットとしては、新薬の開発に携れる、給料の上昇率が大きいなど5つ、デメリットとしては、看護スキルが低下する、利益追求のビジネス・マインドが必要など4つがあります。
また、臨床開発モニターには、コミュニケーションスキルが高い人など、4タイプの人が向いていると言えるでしょう。
臨床開発モニターに転職したいなら、臨床開発モニターに関する疑問をすべて解決して、臨床開発モニターについて正しく理解してから転職するかどうかを決めましょう。
[wphtmlblock id=”1304″]
臨床開発モニターの仕事内容
それでは、「GCP」とは何でしょうか?
GCPは「治験を行う医療機関」や「人の役割」、「業務内容」を細かく規定しています。
ですから、臨床開発モニターは「自分が担当する治験がGCPを守って行われているか」を確認しなければいけません。
臨床開発モニターの仕事内容を1つの治験の流れに沿って説明していきます。
①治験の準備
治験実施医療機関や治験責任医師の選定
臨床開発モニターは、治験を行うための医療機関や責任医師を選ばなくてはいけません。
医療機関は治験を行えるだけの設備や人員が整っているか、SDV(Source Data Verification=原資料との照合・検証)の受け入れ環境が整備されているかなどを基準にして選定していきます。
治験責任医師は治験を適切に実施できるだけの知識や経験はあるか、GCPを熟知しているか、治験に協力するだけの時間を作れるか、治験に参加してもらう被験者(患者)を確保できるかなどを調査して選定します。
治験実施計画書の説明
製薬会社の臨床企画担当やメディカルライターが作成した治験実施計画書(プロトコル)を読み込み、治験責任医師や医療機関の薬剤部や臨床検査部に、その内容を説明して理解してもらいます。
②治験の契約の締結
治験責任医師と協議して、契約症例件数や費用、賠償金や賠償の適用範囲などの契約内容が固まったら、契約書を作成し、治験医療実施機関と契約を締結します。
③治験スタートから終了まで
治験に参加するスタッフへの説明
治験に参加するスタッフを集めてミーティングを行い、治験薬や治験実施計画書(プロトコル)、標準業務手順書(SOP)について説明します。
このミーティングには、治験責任医師や治験コーディネーター(CRC)、看護師、薬剤師、臨床検査技師、医療事務担当などが参加します。
特に、治験コーディネーターとはしっかり打ち合わせをして、治験のスケジュールや手順などを確認しておかなければいけません。
治験薬の交付
治験薬を治験実施医療機関に交付します。
この時、併用が禁止されている薬が治験実施計画書に記載されている場合は、そのことについて薬剤師に念入りに説明しておきます。
また、大きな医療機関だと複数の治験が同時に施行されていますので、ほかの治験薬と混同されないように保管方法や保管スペースを工夫しなければいけません。
被験者の登録の促進
臨床開発モニターは被験者を集めることも重要な業務の1つになります。
治験に参加する被験者を確保できないと治験は進みません。
臨床開発モニターは、治験に参加してもらうために、直接患者さんへ説明するような事はほとんどありません。
臨床開発モニターは、治験責任医師や治験コーディネーターが被験者を集めやすい環境を整えることで、登録を促進します。
- カルテを読んでスクリーニングをしたり
- 患者向けの治験参加へのパンフレットや資料を作成したり
- ボランティアや広告を利用しての宣伝を行う
などが、具体的な方法になります。
モニタリング
臨床開発モニターは、治験実施計画書に従って、「治験が正しく行われているか」を、訪問や電話等でモニタリングしてチェックしなければいけません。
- 治験薬の使用状況、残数、保管状況
- 各種文書の保管・記録
- 治験薬の効果の確認
- 薬剤の飲み合わせの確認
- 副作用の発生状況、対処法の確認
治験実施計画書を逸脱していないか、治験薬の効果や副作用などを随時チェックして、モニタリングしていきます。
症例報告書のチェック
臨床開発モニターは、治験責任医師や治験コーディネーターが作成する症例報告書(CRF=case report form)を回収して、内容をチェックします。
また、SDVを行って、カルテや原資料と症例報告書を照合して、データに転記ミスや不正、漏れがないかどうかを1つ1つ確認します。
モニタリング報告書の作成
モニタリング報告書は、臨床開発モニターが、治験実施医療機関に訪問した後、または電話やFAX等で交信した後に、治験依頼者(製薬会社)に提出する書類のことです。
モニタリング報告書には、訪問や交信によって得られた治験に関する情報や所見すべてと、それに対して行われた措置をすべて記載しなければいけません。
④治験終了後
治験薬の回収
治験が終了したら、治験実施医療機関に残っている治験薬をすべて回収します。
データや文書の確認
治験で得られたデータはすべて収集できているか、治験に関する文書はすべて正しく記載・保管されているかを確認します。
PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の調査対応
PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)は、治験が適切に実施されたかを確認しますので、臨床開発モニターはPMDAからの質問に回答するなど、適切に対応する必要があります。
臨床開発モニターは、治験依頼者である製薬会社側の立場から、治験がスムーズに正しく実施されるように調整・管理・モニタリングする仕事です
看護師が臨床開発モニターになるメリット
看護師が臨床開発モニターになると、次の5つのメリットがあります。
- 新薬の開発に携わることができる
- 給料の上昇率が大きい
- 英語を活かした仕事ができる
- 土日祝日が休日&日勤のみ
- 力仕事はなく、デスクワークが多い
臨床開発モニタ―に転職すると、看護師よりも好条件で働くことが可能になるのです。
新薬の開発に携わることができる
臨床開発モニターとして働くと、新薬の開発に携わることができるというメリットがあります。
新薬が開発されれば、未来のたくさんの命を救うことができます。
臨床開発モニターになれば、今後数えきれないほどの命、世界中の人の命を救う手助けができるのです。
看護師は目の前の患者さんの命を救い、健康を守ることができます。
これは、とてもやりがいがある仕事ですし、とても尊い仕事であることは間違いありません。
でも、看護師は目の前にいる人だけを救う仕事です。
臨床開発モニターは患者さんと接することはないので、目の前の人を救うことはできません。
でも、新薬の開発に携わることで、今までは救えなかった命を救うことができます。しかも、日本だけではなく世界中の人の命を救えます。
さらには、新薬が開発されると、その薬はこれからの未来ずっと人の命を救い続けるのです。
あなたが死んだ後も、100年後も200年後もその新薬で命を救われる人がいます。
そう考えると、新薬の開発に携わることができる臨床開発モニターは、とても意味のある仕事だと思いませんか?
給料の上昇率が大きい
臨床開発モニターに転職するメリットの2つ目は、給料の上昇率が大きいことです。
臨床開発モニターに転職すれば、年収1,000万円も夢ではありません。
看護師として働いていると、夜勤をやりつつ、バリバリ働いていても、年収600万円で頭打ちになると思います。
師長などの管理職になって、ようやく年収700~800万円を稼ぐことができます。
でも、臨床開発モニターは実力によっては年収1,000万円以上、場合によっては1,500万円程度を稼ぐことも可能なんです。
臨床開発モニターに未経験で転職すると、最初は年収450万円程度で看護師とほとんど変わりません。
でも、臨床開発モニターはここからどんどん給料が上がっていきます。
臨床開発モニターが勤務するCROや製薬会社は一般企業で、医療機関や介護施設よりも給料の上昇率が大きいのです。
5年程度の経験を積んで重要な仕事を任されるようになると、年収は500~600万円になり、さらに役職に就くと年収1,000万円を超えるようになります。
外資系の製薬会社で、プロジェクトリーダーとして働くようになると、年収1,500万円前後まで給料が上がります。
英語を活かした仕事ができる
臨床開発モニターに転職するメリットの3つ目は、英語を活かした仕事ができることです。
臨床開発モニターは英語を使う機会が多いので、英語を活かしながら働くことができます。
英語が得意でも、看護師として働いていると、英語を活かす機会はほとんどありません。
でも、臨床開発モニターは英語の文献を読まなければいけないこともあります。
また、近年は国際共同治験が増加してきていますので、英語の文献を読むだけでなく、英語での書類作成やコミュニケーションが必要になるケースも多々あります。
英語が得意な看護師は、臨床開発モニターに転職すると、英語力を活かして働くことができるのです。
土日祝日が休日&日勤のみ
臨床開発モニターに転職すると、土日祝日が休日で日勤のみの勤務になります。
土日祝日が休日で日勤のみの仕事なら、体調管理をしやすいですし、プライベートを充実させやすいというメリットがあります。
臨床開発モニターは、一般企業であるCROや製薬会社に勤務しますので、カレンダー通りの休みになります。また、当然のことですが夜勤はありません。
年末年始はしっかり休めますし、ゴールデンウィークも休めます。夏休みもしっかり取ることができるのです。
力仕事はなく、デスクワークが多い
臨床開発モニターに転職すると、デスクワークが多く、体力的に楽になるというメリットがあります。
臨床開発モニターは、症例報告書のチェックやモニタリング報告書の作成など、デスクワークが多い仕事になります。
患者さんと接する機会はほぼありませんので、清潔ケアや移動介助などの「力仕事」はないのです。
臨床開発モニタ―はビシッとスーツを着て、パソコンを使って働く仕事ですので、臨床開発モニターに転職すると、看護師に比べて体力的にはグッと楽になるでしょう。
臨床開発モニターに転職すると、
- 新薬の開発に携わることができる
- 給料の上昇率が大きい
- 英語を活かした仕事ができる
- 土日祝日が休日&日勤のみ
- 力仕事はなく、デスクワークが多い
という5つのメリットがあるんです
看護師が臨床開発モニターになるデメリット
看護師が臨床開発モニターになるデメリットは、次の4つがあります。
- 看護スキルが低下する
- パソコンスキルが必要になる
- 出張や残業が多い
- 利益追及の姿勢が必要
臨床開発モニターは、一般企業に勤め、患者と接する機会がない仕事になりますので、そのことから発生するデメリットがあるのです。
看護スキルが低下する
看護師から臨床開発モニターに転職すると、今まで身につけた看護スキルが低下するというデメリットがあります。
臨床開発モニターとして長年働いてしまうと、また看護師として臨床現場に戻ろうと思った時に苦労するのです。
臨床開発モニターは患者さんと接しません。採血や吸引などの医療行為も行いません。
そのため、臨床開発モニターになると、今まで日常的に使っていた看護スキルをほとんど使わなくなり、看護スキルが低下します。
臨床開発モニターに転職後、また看護師として働くのは不可能ではありません。
しかし、勘を取り戻すまでに時間がかかりますし、急性期病棟など医療行為が多い職場への復帰は厳しいかもしれません。
パソコンスキルが必要になる
臨床開発モニターになると、パソコンを使って仕事をしますので、基本的なパソコンスキルが必要になります。
パソコンが苦手な人は入職までに、一通りパソコンを使えるようになっておかなければいけません。
パソコンスキルと言っても、インターネットができるだけではいけません。電子カルテへの記入がなんとかできる程度のスキルでは、厳しいと思います。
臨床開発モニターは「ワード」や「エクセル」を使っての文書作成などを日常的に行います。
パソコンが苦手な看護師は多いと思いますが、臨床開発モニターになるなら、「ワード」や「エクセル」を自由に使えるようにしておく必要があるのです。
出張や残業が多い
看護師から臨床開発モニターへ転職するデメリットには、出張や残業が多いことがあります。
そのため、女性の場合は臨床開発モニターの仕事と、家庭・育児を両立するのが難しいかもしれません。
臨床開発モニターが勤務するCROや製薬会社は大都市にしかありません。でも、治験を行う実施医療機関は全国各地にあります。
そのため、臨床開発モニターは日帰りや泊りで全国各地の治験実施機関を訪問しなければいけません。
また、臨床開発モニターは残業が多いことも特徴の1つです。
どのくらいの残業があるのかは、職場やプロジェクトの進行具合によって異なりますが、平均すると月20~50時間程度は残業があります。
CROによっては、月平均80時間以上の残業があることもあります。
日勤のみの仕事とはいえ、看護師以上の残業をすることもあるのです。
利益追求の姿勢が必要
臨床開発モニターのデメリットの4つ目は、利益追求の姿勢が必要なことです。
臨床開発モニターは一般企業に勤めますので、会社の利益を優先して働かなければいけません。
看護師として働いていると、あまりコストを気にかけず、患者さんの命を最優先にして働きます。
病院の利益を気にして働かなければいけないことは、ほとんどなかったと思います。
でも、臨床開発モニターは民間企業の社員として働きます。民間企業は利益を追求するのが当たり前です。
もちろん、新薬開発という使命を持っていますが、民間の一般企業は利益を生み出すことが第一目的になります。
そのため、社員も利益を追求して働かなければいけないので、看護師から転職すると、そのことに違和感を感じることもあるのです。
臨床開発モニターへの転職のデメリットは次の4つです。
- 看護スキルが低下する
- パソコンスキルが必要になる
- 出張や残業が多い
- 利益追及の姿勢が必要
臨床開発モニターに向いている人
臨床開発モニターに向いているのは、次の4つのタイプです。
- 医療の発展に携わりたい人
- 英語が得意でグローバルな活躍をしたい人
- 高収入を得たい人
- コミュニケーションスキルが高い人
このようなタイプの人は、臨床開発モニターに転職すると、やりがいを感じたり、満足感を得ながら働くことができるはずです。
医療の発展に携わりたい人
医療の発展に携わりたい人は、臨床開発モニターに向いています。
看護師の仕事をしていて、目の前の患者さんを助けることも大切だけど、もっとたくさんの人の命を助けたいと思うようになる事もあると思います。
また、看護師として治験に携わり、新薬が患者さんの「希望の光」になっているのを目の当たりにして、治験に興味を持ち、「治験の分野から患者さんを助けたい」と思うようになった人もいると思います。
そのような人は、臨床開発モニターに転職すると、やりがいを持って働くことができるでしょう。
英語が得意でグローバルな活躍をしたい
臨床開発モニターには、英語が得意でグローバルな活躍をしたい人が向いています。
臨床開発モニターは英語を活かせる仕事です。
英語力があれば、それだけ昇進のチャンスが巡ってきますし、重要な仕事を任されるようになります。
国際共同治験とは複数の国や地域で同時に行う治験のことです。
国際共同治験を頻回に行っているCROや製薬会社でCRAとして働くと、英語を使う機会が多いだけでなく、アジアやアメリカ、ヨーロッパなどへ海外出張などもあり、グローバルに活躍することもできるのです。
そのため、英語が得意で、日本国内だけでなくグローバルな活躍をしたいという看護師さんは、臨床開発モニターに向いているでしょう。
高収入を得たい人
臨床開発モニターは、高収入を稼ぎたい人も向いています。
「とにかく年収をアップさせたい」、「年収1,000万円の大台を超えたい」という看護師は、臨床開発モニターに転職すると良いでしょう。
看護師のままでは、どんなに頑張っても年収1,000万円を稼ぐのはほぼ不可能です。
でも、臨床開発モニターに転職すれば、臨床開発モニターとして経験を積み、英語力を磨いてスキルアップすることで、年収1,000万円を稼ぐことが可能です。
看護師の給料に不満を持っている人、看護師の仕事は割に合わないと思っている人は、臨床開発モニターに転職すると良いと思います。
コミュニケーションスキルが高い人
コミュニケーションスキルが高い人は、臨床開発モニターに向いています。
臨床開発モニターとして、治験をスムーズに進めていくためには、治験にかかわる人と密にコミュニケーションをとっていく必要があります。
治験実施計画書を治験責任医師や治験コーディネーター、治験に参加するスタッフに、分かりやすく説明しなければいけません。
また、被験者集めのためには、治験責任医師や治験コーディネーターの協力を得る必要があります。
そのためには、短時間で人間関係を構築できるような、高いコミュニケーションスキルが要求されるのです。
臨床開発モニターに向いているのは、次の4つのタイプです。
- 医療の発展に携わりたい人
- 英語が得意でグローバルな活躍をしたい人
- 高収入を得たい人
- コミュニケーションスキルが高い人
臨床開発モニターになりたい看護師のFAQ 11個
臨床開発モニターになりたい看護師さんは、次のような疑問を抱くと思います。
- 臨床開発モニターになるにはどうすれば良い?
- 製薬会社とCROでは何が違うの?
- 臨床開発モニターになるために資格が必要なの?
- 臨床開発モニターになってからの資格にはどんなものがあるの?
- 臨床開発モニターは未経験でも求人はあるの?
- 臨床開発モニタ―の仕事に看護師スキルを活かせるの?
- 臨床開発モニタ―と治験コーディネーターの違いは?
- 臨床開発モニターは離職率は高いの?
- 臨床開発モニターの将来性はあるの?
- 臨床開発モニターは年齢制限があるの?
- 臨床開発モニターの求人を選ぶ時の注意点は?
この11個の疑問を解決してから、臨床開発モニターになるかどうかを決断すると良いでしょう。
臨床開発モニターになるにはどうすれば良い?
臨床開発モニターになるためには、CROや製薬会社の臨床開発モニターの求人に応募する必要があります。
臨床開発モニターの求人には、「新卒採用」と「中途採用」の2種類がありますが、看護師は中途採用の求人に応募することになります。
臨床開発モニターの新卒採用は、農学や化学、生物学、薬学など理系の大学や大学院卒を卒業することが応募条件になることがほとんどです。
でも、中途採用なら看護師の臨床経験があれば、別に大卒でなくても、専門卒や短大卒でも、採用試験に合格すれば、臨床開発モニターになることができるのです。
ただ、臨床開発モニターの採用試験は看護師の採用試験より難しいとされています。
中途採用で臨床開発モニターになろうとする人は、看護師だけでなく薬剤師や臨床検査技師、MRなどがいます。
看護師は、ほかの職種に比べると、社会人のマナーが身についていなかったり、就職活動に慣れていない傾向にあります。
そのため、看護師が中途採用で臨床開発モニターを目指すなら、中途採用の求人を探すだけでなく、社会人としてのマナーや就職活動のいろはを見直し、面接対策をしっかりしておきましょう。
薬剤師や臨床検査技師、MRよりも「看護師が臨床開発モニターとして優れている点」をアピールして、1社不採用になっても諦めずに、違う会社を受けるようにすれば、採用してもらえるはずです。
看護師が臨床開発モニターとして優れている点は、この後お話する「臨床開発モニターの仕事に看護師スキルを活かせるの?」を参考にしてください。
製薬会社とCROでは何が違うの?
臨床開発モニターの勤務先は「製薬会社」と「CRO」の2つがあります。
看護師から臨床開発モニターに転職するなら、まずはCROで働くことが現実的です。
CROは治験のモニタリングをする専門の会社であり、新薬を開発した製薬会社から治験業務を委託される受託機関になります。
製薬会社は新薬の開発から販売までを行っています。
そのため、臨床開発モニターが行う治験のモニタリング業務は製薬会社の業務の一部分です。
しかも、モニタリング業務は基本的にCROに委託しますので、製薬会社の臨床開発モニターはおもに、治験実施計画書(プロトコル)を作成したり、臨床開発の企画、治験を行うために必要な承認申請などを行います。
治験のモニタリングをするのではなく、その前後に必要な事務仕事が主な仕事になるのです。
この製薬会社の臨床開発モニターの仕事は、非常に難易度・専門性が高く、未経験者には務まらない仕事です。
臨床開発モニターは、まず治験のモニタリングから始めて、少しずつスキルアップし、難しい仕事にチャレンジしていくようになります。
そのため、看護師が臨床開発モニターに転職するなら、まずは治験のモニタリング専門会社であるCROで働いたほうが良いでしょう。
製薬会社のCRA業務はCROよりも難易度が高いものの、さらに給料や福利厚生が充実している傾向にありますので、CROで経験を積んでから、製薬会社への転職を考えると良いかもしれません。
また、製薬会社の中途採用の求人は、CROよりも応募条件が厳しく、看護師からの転職はかなりハードルが高いという現実がありますので、まずはCROへの転職をおすすめします。
臨床開発モニターになるために資格が必要なの?
「臨床開発モニター」という資格があるわけではなく、特になんの資格や免許も必要ありません。
ただ、仕事の内容上、医学的知識・薬学的知識が必要になります。医学・薬学系の論文を読んで、その内容を理解できないと、仕事になりません。
そのため、理系の学部卒・院卒、または薬剤師、看護師、臨床検査技師などの医療系の資格を持った人が臨床開発モニターとして働くことになります。
臨床開発モニターになってからの資格にはどんなものがあるの?
臨床開発モニターになるためには、特に資格は必要ありませんが、臨床開発モニターとして働きだしたら、スキルアップのために資格を取得することが求められます。
臨床開発モニターのキャリアアップのための資格には、次のようなものがあります。
- 日本CRO協会 CRA教育研修修了認定
http://www.jcroa.or.jp/education/cra.html
- 日本CRO協会 治験実務英語検定(3コースあり)
http://www.jcroa.or.jp/education/en_overview.html
- JSCTR認定 GCPパスポート
http://www.j-sctr.org/nintei/index.html
- JSCTR認定 GCPエキスパート
http://www.j-sctr.org/nintei/index.html
- JSCTR認定 がん臨床研究専門職
http://www.j-sctr.org/nintei/index.html
臨床開発モニターとして採用されたら、このような資格取得を視野に入れて、経験を積んでいくと良いでしょう。
臨床開発モニターは未経験者でも求人はあるの?
大丈夫です。臨床開発モニターの仕事が未経験でも、看護師免許を持っていれば、中途採用の求人に応募することができます。
ただ、看護師免許を持っている「だけ」ではいけません。
ほとんどの中途採用の求人で、臨床経験(病棟経験)が2~3年あることが応募条件になっています。
そのため、看護師が臨床開発モニターになるためには、新卒ですぐにCRAを目指すのではなく、臨床経験を2~3年積んでからにしましょう。
臨床開発モニターの仕事に、看護師スキルを活かせるの?
臨床開発モニターは、必ずしも看護師免許が必要な仕事というわけではありません。
ただ、看護師スキルは、臨床開発モニターとしての武器になります。
- 臨床開発モニターは、被験者を集めるため、またSDVのために、カルテを読み込まなくてはいけません。
看護師はカルテを読むのに慣れているので、仕事をスムーズに進めることができます。 - また、医師とのコミュニケーションを円滑に進める方法を熟知していますし、
- 疾患についての知識も豊富です。
- さらに、病院の仕組みなどもわかっています
このように看護師としての経験・スキルを臨床開発モニターの仕事に活かすことができるのです。
臨床開発モニターと治験コーディネーターの違いは?
治験にかかわる仕事には、臨床開発モニター以外に、治験コーディネーターがあります。
- 臨床開発モニターは、製薬会社の立場から、治験がスムーズに正しく行われるように調整・管理・モニタリングをする仕事です。
- 治験コーディネーターは、治験を実施する医療機関の立場から、治験責任医師の指示に基づいて、実務レベルで治験の事務作業や調整・管理を行う仕事になります。
治験コーディネーターは臨床開発モニターとは異なり、患者(被験者)と接する機会もあります。
臨床開発モニターの離職率は高いの?
臨床開発モニターの離職率の正確な統計はありませんが、おおよそ10~15%ではないかと推測されています。
日本看護協会の「2015年病院看護実態調査 結果速報(PDF)」では、看護師の離職率は10.8%となっています。
臨書開発モニターの離職率は、看護師と同じ程度、もしくはやや高めと言えるでしょう。
ただ、看護師から臨床開発モニターに転職すると、数ヶ月で退職してしまう人が少なくないことは事実です。
看護師から臨床開発モニターに転職して、早期退職する人は、次のような理由で退職することが多いようです。
- 想像以上に激務だった
- やりがいを感じない
- 仕事が難しくてよくわからない
- 利益追求の姿勢についていけなかった
- 事務作業を苦痛に感じた
- やっぱり看護師の仕事の方が楽しい
看護師から転職して臨床開発モニターになる人は、このようなことに悩む人が多いので、これから臨床開発モニターになろうと思っている人は、臨床開発モニターのメリットとデメリットをよく考えて、転職するかどうかを決めるようにしましょう。
臨床開発モニターの将来性はある?
出典:CROで働く魅力とは | CROの仕事 | 一般社団法人 日本CRO協会
臨床開発モニターは将来性のある仕事です。CROは急成長している会社が多いのです。
新薬開発の分野では、今後は「国際共同治験」の割合がどんどん増えていくことが予想されています。
また、
- 患者数が少なく、研究が進んでいない「オーファンドラッグ(希少疾病医薬品)」
- 治療法が見つかっていない疾患の治療薬「アンメット・メディカルニーズ」
- iPS細胞技術に基づく再生医療
などの研究が盛んに行われていますので、今後はさらにCRAが活躍する機会は増えていくはずです。
臨床開発モニターは年齢制限がある?
臨床開発モニターは求人情報上は年齢制限はありません。
でも、実際は未経験者の場合は30歳未満でないと、採用されないことが多いのが現実です。
求人情報に年齢制限を掲載するのは、改正雇用対策法という法律で禁止されています。
そのため、求人に応募するのは何歳でも可能です。40歳でも50歳でも、臨床開発モニターの求人に応募することは出来ます。
ただ、臨床開発モニター未経験の場合は、採用されるのは20代の人だけで、表立っては「年齢を不採用の理由」にはしていませんが、実際は年齢を見て書類選考の時点で不採用になることが多いようです。
そのため、臨床開発モニターへの転職を考えている人は20代のうちにチャレンジすると良いでしょう。
臨床開発モニターの求人を選ぶ時の注意点は?
臨床開発モニターの求人を選ぶ時は、次の3つに注意する必要があります。
- 研修制度を確認する
- 職場の看護師の割合をチェックする
- 国際共同治験の数を確認する
臨床開発モニターになりたいなら、この3つの注意点を守って求人を選べば、転職に失敗せずに済むでしょう。
研修制度を確認する
臨床開発モニターの求人を選ぶ時には、研修制度を確認しましょう。
研修制度が整っていないと、何もわからないまま仕事をすることになり、「仕事ができない。わからない」というストレスを抱えることになります。
看護師経験はあっても、臨床開発モニターの仕事は未経験なのですから、臨床開発モニターの「いろは」を教えてくれるCROを選ばないといけません。
右も左もわからない状態で仕事を任されるのは、ストレス以外の何物でもありません。
誰も仕事を教えてくれないのに、「なんで仕事が終わっていないの?」、「なんで出来ないの?」と言われることほど辛いことはありません。
看護師から臨床開発モニターに転職するなら、研修制度を確認して、臨床開発モニターの仕事を一から教えてくれるところを選ばなければいけません。
職場の看護師の割合をチェックする
臨床開発モニターの求人を選ぶ時には、その職場の看護師の割合をチェックしましょう。
看護師の割合が多ければ、そのCROに採用されやすいですし、採用後も働きやすいと思います。
臨床開発モニターとして働く人は、理系大学・大学院から新卒で採用される人、看護師や薬剤師、臨床検査技師、MRの経験がある人がいます。
この中で比較的看護師の割合が高いと、「そのCROは看護師経験を重宝している」ということになりますので、看護師の割合が少ないCROに比べると、採用してもらいやすいでしょう。
また、採用後は同じ看護師免許を持つ者同士、臨床開発モニターとして働く上での悩みや、「看護師経験をどうやって活かすのか」などを相談しやすいので、働きやすい職場環境が整っています。
そのため、看護師が臨床開発モニターに転職するなら、職場の看護師の割合が高いCROを選ぶと良いでしょう。
国際共同治験の数を確認する
臨床開発モニターの求人を選ぶ時には、国際共同治験の数を確認しておくと良いでしょう。
国際共同治験がどんどん増えています。
国際共同治験の割合が高いCROはそれだけ今後、業績が伸びていく可能性が高いですし、そのCROで働けば、グローバルに活躍できるチャンスがあるということになります。
臨床開発モニターとして、よりやりがいがあり、より待遇の良いCROや製薬会社に転職するためには、国際共同治験をどれだけ担当したことがあるかということが重要になります。
臨床開発モニターとして経験を積むためには、またグローバルに活躍するためには、国際共同治験の数や割合を確認しておくと良いでしょう。
臨床開発モニターの求人を選ぶ時は次の3ポイントに注意!
- 研修制度を確認する
- 職場の看護師の割合をチェックする
- 国際共同治験の数を確認する
まとめ
臨床開発モニターの仕事内容やメリット・デメリット、向いている人、11個のFAQをまとめました。
臨床開発モニターは新薬の開発に携わることができ、高収入を狙える仕事ではあるものの、激務の仕事になります。
同じく治験に携わる仕事には、「治験コーディネーター」があります。
興味のある方は、「治験コーディネーターに看護師から転職したい!簡単まる分かり解説!&FAQ11個」も参考にしてください。
[wphtmlblock id=”1395″]
コメント