[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more.. ]
「治験コーディネーターって看護師よりも楽って聞いたから、治験コーディネーターに転職してみたい」と思っている看護師さんや、「治験に興味がある」看護師さん、治験コーディネーターについてきちんと理解していますか?
治験コーディネーターは治験業務全般を医療機関の立場からサポートする仕事です。
治験コーディネーターになると、(1)医療の発展に携わることができる、(2)患者さんと接することができる、(3)土日祝日が休みになる、(4)日勤のみで働ける、(5)デスクワーク中心の仕事である、いった5つのメリットがあります。
デメリットは、(1)臨床に戻りにくくなること、(2)人間関係でストレスがあること、(3)パソコンスキルが必須であることの3つです。
また、看護師から治験コーディネーターへ転職するのに向いているのは、次の5つのタイプの人です。
- 治験に興味がある人
- 家庭と仕事を両立させたい人
- 看護師の仕事が体力的にきつい人
- 事務作業が得意な人
- コミュニケーションスキルが高い人
治験コーディネーターに転職するなら、治験コーディネーターに関する疑問を全て解消して、失敗なく、転職するようにしましょう。
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治験コーディネーターの仕事内容
治験コーディネーター(CRC=Clinical Research Coordinator)とは、SMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)や病院に勤めて、治験をサポートする仕事です。
治験責任医師や治験分担医師の指示に基づいて、治験に関わる事務的作業や治験の調整・管理など、治験を行う医療機関側の立場から治験業務全般をサポートします。
治験業務をサポートする仕事といっても、具体的なイメージが湧かないと思いますので、1つの治験が行われる時に、治験コーディネーターはどのような仕事をするのかを説明していきます。
治験開始前の準備
治験内容の理解 | 治験実施計画書に基づいて製薬会社の研修に参加し、治験内容を理解する。 |
フロー作成 | 治験業務フロー(流れや予定表)を作成する。 |
症例管理資料の作成 | 治験の概要や検査項目、予定、禁止事項など症例管理のための資料を作成する。 |
治験の連絡・調整 | 治験に参加する治験責任医師や治験分担医師、看護師、臨床検査技師、薬剤師、事務局担当者などに対して治験実施について説明を行い、治験の連絡・調整を行う。 |
治験に参加する被験者(患者)への対応
被験者のスクリーニング | 治験の条件に適合し、治験に参加する被験者を治験に参加する医師からの紹介やカルテ検索、広告利用(ボランティアやアルバイト)などの方法を使って集める。 |
被験者への同意説明 | 被験者に治験の内容を説明し、同意を得る。 |
診察・検査の立ち合い | 被験者の診察や検査に立ち会い、治験に適格性があるかどうかをチェックする。 |
被験者への相談窓口 | 治験中は被験者と面談し、被験者のスケジュール管理や治験薬の服薬状況の確認、有害事象の有無やコンプライアンスの確認をする。
また、被験者の治験に対する不安や相談に乗ったり、緊急時には被験者の対応窓口として対処する。 |
治験担当医師への対応
関係書類作成の補助 | 同意説明書や症例報告書などの作成を補助する |
治験実施計画書遵守の補助 | 治験実施計画書に基づいて治験が行われるように、スケジュールやデータ管理の補助を行う |
有害事象対応支援 | 有害事象が発生した時の対応を医師と協力して行う |
治験に参加する医療スタッフとの連携調整や業務補助
薬剤部 | 治験薬の説明、オーダリング業務 |
看護師(部) | 患者への対応 |
臨床検査部 | 検査項目や検査スケジュール |
医事課 | 被験者の来院時の受付の段取り、費用等 |
SMA (Site Management Associate=治験事務局担当者) |
治験の書類の管理 |
治験の依頼者(製薬会社・臨床開発モニター)への対応
依頼者との打ち合わせ | 治験依頼者である製薬会社の臨床開発モニターと、治験の概要やスケジュールなどの打ち合わせをして、治験が円滑に行われるようにする。 |
治験薬の搬入や回収の補助 | 製薬会社から治験薬を医療機関へ搬入する時には、院内の治験薬等管理者(治験薬等管理補助者)とともに立ち合い、搬入に必要な書類等をチェックする。回収も同様に必要書類を確認する。 |
治験実施状況の報告 | 臨床開発モニターに治験の実施状況を報告し、質問への対応をする。 |
症例報告書の作成 | 治験終了後は、治験の検査データや副作用、担当医師の所見などを記入した症例報告書(CRF=Case Report Form)を作成し、医師に確認を取った後に臨床開発モニターに提出する。 |
SDVへの対応 | 臨床開発モニターから原資料閲覧(SDV=Source Data VerificationまたはSource Document Verification)を求められた時に対応する。
原資料閲覧とは、医療機関が保管している治験の結果が記載されたカルテなど閲覧して、症例報告書と相違がないか照合・検証すること。 |
看護師が治験コーディネータになるメリット
看護師が治験コーディネーターになるメリットは、医療の発展に携われること、患者さんと接することができること、土日祝日が休みのこと、日勤のみであること、デスクワーク中心であることの5つがあります。
医療の発展に携われること
治験コーディネーターとして働くと、医療の発展に携わることができます。
治験は新薬の開発に欠かすことができないものです。
新しい薬が承認されることでたくさんの患者さんの命を救うことができます。
看護師は、目の前にいる患者さんのケアをすることで、患者さんの命を助けることができます。これも素晴らしい仕事です。
でも、治験コーディネーターは治験が上手くいって、期待するような薬の効果が得られれば、まず、目の前の患者さんを助けることができます。
さらに、その新しい薬で、未来の数えきれないほどたくさんの患者さんの命を救う仕事でもあるのです。
「医療の発展に携わる」という意味では、看護師よりも治験コーディネーターの方が大きな役割を果たしていると言えるかもしれません。
患者さんと接することができる
治験コーディネーターは被験者である患者さんと接し、患者さんの精神的なケアをすることができます。
そのため、看護師時代に培ったスキルを活かしながら働くことができるのです。
治験コーディネーターは病院でも働くことができますが、ふつうは一般企業であるSMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)に勤務します。
つまり、臨床現場を離れることになります。
それでも、治験の説明をしたり、被験者の相談窓口となって精神的なケアをするのが仕事の1つですので、患者さんと接しながら働くことができるのです。
同じように治験をサポートする仕事である臨床開発モニターは、患者さんと接する機会はほぼありません。
治験コーディネーターは、治験に関わる仕事をしつつも、患者さんと接し、ケアをすることができる仕事なのです。
土日祝日がお休み
治験コーディネーターは、一般企業であるSMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)に就職しますので、土日祝日がお休みになります。
看護師として働いていると、土日祝日関係なく働かなくてはいけません。
クリニックや外来では日曜祝日はお休みというところはありますが、土曜日も休みというところは少ないのが現実です。
そのため、看護師は土日祝日が完全に休みという職場で働くのは、とても難しいのです。
その点、治験コーディネーターは一般企業で働くため、カレンダー通りの休日になりますので、土日祝日はお休みになります。
年末年始やゴールデンウィークもしっかり休むことができます。
年間休日も看護師に比べると多く、有給休暇を除いて120~130日のところがほとんどになります。
治験依頼者の製薬会社が土日祝日がお休みなので、病院勤務の治験コーディネーターも土日祝日がお休みになることが多くなっています。
仕事は日勤のみ(夜勤なし)
治験コーディネーターのメリットの4つ目は、日勤のみの仕事になることです。
夜勤が苦手な看護師さんや子育て中のママさん看護師にとって、日勤のみで働けるのはとても大きなメリットになると思います。
治験コーディネーターは、一般企業勤務で、治験担当医師や製薬会社と連携をしながら働くので、昼間でないと業務が進みませんし、あえて夜勤で働く必要性がありません。
入院している被験者の管理は、その病棟の看護師が行ってくれますので、治験コーディネーターは日勤のみで働くことができるのです。
デスクワークが中心
治験コーディネーターはデスクワークが中心の仕事になりますので、患者さんのオムツ交換や移動介助などの力仕事はありません。
そのため、体力的には看護師よりも楽になります。
治験コーディネーターは、資料や書類の作成、被験者や医師、医療スタッフへの説明や連携・調整が主な仕事に仕事になりますので、デスクワークが中心です。
治験前や治験中に医師の診察に立ち会うこともたびたびありますが、それでも看護業務を行うことはありません。
看護師が治験コーディネーターになるデメリット
看護師が治験コーディネータになるデメリットは、「臨床に戻りにくいこと」、「人間関係でストレスがあること」、「パソコンスキルが必須であること」の3つがあります。
治験コーディネーターになりたい看護師さんは、メリットだけでなくデメリットもしっかり押さえておきましょう。
デメリットを知らないと、転職後に「想像していたのと違う」というギャップを感じて、早期離職に追い込まれるリスクも高くなります。
臨床に戻りにくいこと
治験コーディネーターのデメリットの1つ目は、臨床に戻りにくいことです。
治験コーディネーターとして長年働いていると、再び医療機関で働くことが難しくなります。
治験コーディネーターは病院やクリニックに出向いて働くことが多いですし、実際に患者さん(被験者)と接する機会はたくさんあります。
被験者の精神的なケアを行うこともあります。
それでも、患者さんに採血や注射などの医療行為をすることはありませんし、日常生活援助をすることもありません。
そのため、治験コーディネーターとして長く働いていると、看護師時代に身につけた看護スキルが衰えてしまいますので、再び臨床現場で看護師として働くのが難しくなるのです。
治験コーディネーターとして長年働いていると、臨床現場に戻れないというわけではありませんが、戻るのは簡単ではないこと、それなりに苦労することは覚えておかなくてはいけません。
人間関係でストレスがあることも
治験コーディネーターは人間関係でストレスがあることもあります。
治験コーディネーターはたくさんの職種と連携・調整していかなくてはいけないので、いろいろな気配りや配慮が必要であり、ストレスが溜まるのです。
特に、治験担当医師や治験分担医師の中には、気難しい人も多く、その医師に治験内容を説明し、協力を求め、医師が治験をスムーズに進行できるようにサポートするのは大変なことです。
また、医師だけでなく治験依頼者の製薬会社や臨床開発モニター、治験を実施する医療機関の各部署やスタッフを連携・調整をするにも、交渉力や気配りが必要ですので、ストレスが溜まっていくことがあります。
パソコンスキルは必須
治験コーディネーターは書類作成などのデスクワークが多いので、パソコンスキルは必須になります。
パソコンを使えないと、治験コーディネーターの仕事はできないと言っても良いかもしれません。
治験コーディネーターはパソコンで書類を作成したり、治験データを管理する必要があります。
そのため、パソコンはメールとインターネットしか使えないという人では仕事にならないのです。
もちろん、治験コーディネーターの仕事をしながら必要なことを覚えていけば良いのですが、それでもワードとエクセルは最低限使えたほうが良いでしょう。
治験コーディネーターに向いている人
看護師から治験コーディネーターに転職するのに向いているのは、次の5つのタイプの人です。
このような人は、治験コーディネーターに向いていますので、治験コーディネーターに転職すると長く働くことができるでしょう。
1.治験に興味がある人
2.家庭と仕事を無理なく両立させたい人
3.看護師の仕事が体力的にきつい人
4.事務作業が得意な人
5.コミュニケーションスキルが高い人
治験に興味がある人
治験コーディネーターに向いているのは、治験に興味がある人です。
これは基本中の基本であり、いくら治験コーディネーターの勤務条件が理想的でも、治験に興味が持てないと、治験コーディネーターの仕事は長続きしないと思います。
治験コーディネーターは、新薬開発に携わることで、未来のたくさんの患者さんの命を救う仕事ですが、看護師のように目の前の患者さんを直接助けるわけではありません。
そのため、治験に興味を持っていないと、仕事のやりがいを感じることができないのです。
病院やクリニックで看護師の仕事をしている時に、治験に参加する患者さんの看護をする機会がありますよね。
その時に、治験に興味を持ち、治験に関わる仕事がしたいと思えれば、治験コーディネーターに向いていると思います。
家庭と仕事を無理なく両立させたい人
家庭と仕事を無理なく両立させたい人も治験コーディネーターに向いています。
治験コーディネーターの仕事は、日勤のみで土日祝日が休みなので、家庭と仕事を無理なく両立しやすいのです。
看護師の仕事は夜勤がありますし、土日祝日関係なく働かなくてはいけない職場が多いですよね。
そうすると、家族と過ごす時間が取れず、すれ違いの生活になってしまい、場合によっては、家族の中で疎外感を感じることになったり、離婚危機・家庭崩壊の危機に直面することもあります。
また、子育て中の人は日曜日や祝日には保育園がお休みなので、預けるところがなくて毎回困ってしまうという人も多いのではないでしょうか。
でも、治験コーディネーターは、日勤のみで土日祝日はお休みという一般サラリーマンと同じ勤務時間になりますので、家庭と仕事を無理なく両立させながら働くことができるのです。
看護師の仕事が体力的にきつい人
看護師の仕事が体力的にきついと感じている人も、治験コーディネーターに向いています。
治験コーディネーターは、デスクワーク中心で力仕事がないので、看護師よりも体力的に楽に働けるのです。
また、日勤のみで規則正しい生活を送ることができますので、体調管理をしやすいと思います。
看護師の仕事をしていて、体力的にヘトヘトになってしまう人、腰痛に悩んでいる人、自律神経のバランスが乱れて体調不良に悩んでいる人は、治験コーディネーターに転職すると良いでしょう。
事務作業が得意な人
治験コーディネーターは、事務作業が得意な人も向いています。
治験コーディネーターはデスクワークが多く、書類作成や連絡・調整などの仕事が多いので、体を動かしながら働くよりも、コツコツとやる事務作業が好きでないと仕事が続かないのです。
長時間パソコンに向き合って仕事をするのが苦ではない人、コツコツ仕事をするのが好きな人、計画・調整をするのが得意な人は治験コーディネーターへの転職をおすすめします。
コミュニケーションスキルが高い人
治験コーディネーターはコミュニケーションスキルが高い人が向いています。
治験コーディネーターは、説明や交渉をすることが多い仕事ですので、コミュニケーションが得意な人だと、仕事が円滑に進みます。
治験コーディネーターは気難しい医師に治験の概要を説明して、協力を取り付けなければいけません。
気難しい医師への対処方法は、看護師時代に身につけたスキルを活かせると思います。
また、被験者へ治験を説明し、同意を得る必要がありますし、治験依頼者である製薬会社や臨床コーディネーターとの連絡・調整も必要です。
治験を行う医療施設の看護師や薬剤師、その他スタッフと連絡・説明・調整が必要になります。
そのため、コミュニケーションスキルが高い人は、治験コーディネーターの仕事をスムーズに進めることができるのです。
治験コーディネーターになりたい看護師のための「FAQ 11個」!
治験コーディネーターになりたい看護師さんは、次のような11個の疑問を抱くと思います。
まずは、これら11個の疑問を解決してから、治験コーディネーターを目指しましょう!
- どうやったら治験コーディネータになれるの?
- 病院とSMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)では何が違うの?
- 治験コーディネーターになるには資格が必要なの?
- 治験コーディネーターは未経験でも求人はあるの?
- 治験コーディネータの年収はどのくらい?
- 看護師のスキルを活かせるの?
- 臨床開発モニターとの違いは何?
- 残業や出張は多いの?
- 英語は必要ですか?
- 離職率が高いって本当?
- 治験コーディネーターの求人を選ぶ時の注意点は?
どうやったら治験コーディネーターになれるの?
治験コーディネーターになるには、治験コーディネーターの求人に応募する必要があります。
治験コーディネーターの求人には、新卒採用と中途採用の2種類がありますが、看護師は看護師経験を積んでから、中途採用で治験コーディネーターの求人に応募する方が確実です。
新卒採用は、大学の理系学部や医療系学部を卒業する人向けのものになります。
大学の看護学部を卒業する人は看護師経験がなくても、新卒向けの求人に応募して採用されれば、治験コーディネーターになることができます。
ただ、専門学校や短大を卒業する人は、新卒採用は難しいでしょう。
でも、看護師経験があるなら話は別です。
治験コーディネーターの中途採用の求人は、「看護師の臨床経験3年以上」のような条件が付いたものがほとんどです。学歴は問いません。
そのため、看護師の臨床経験があれば、大卒でなく専門学校卒や短大卒の看護師さんでも治験コーディネーターになることができるのです。
採用試験はSMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)の場合、一般企業になりますので、看護師の採用試験よりは難しくなります。
特に、書類選考は重要ですので、履歴書と職務経歴書は丁寧にしっかりと書かなければ、書類選考で落とされてしまいます。
職務経歴書については、「失敗しない!看護師の正しい職務経歴書のカンタン書き方」を参考にしてください。
履歴書や職務経歴書をしっかりと作成し、パソコンスキルがあって、面接対策をしっかりすれば、内定をもらえるはずです。
病院とSMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)では何が違うの?
治験コーディネーターの職場には、病院とSMO(Site Management Organization 治験施設支援機関)の2ヶ所があります。
仕事内容は病院勤務でもSMO勤務でもほとんど同じです。
ただ、病院勤務の治験コーディネーター(院内CRC)は勤務している病院の治験のみを専門に扱うのに対し、SMO勤務の治験コーディネーターは複数の病院やクリニックに派遣される形で仕事を行います。
SMO勤務の場合、複数の治験を同時進行で担当することも珍しくありません。
また、SMOの治験コーディネーターの求人は正社員のものが多いですが、院内CRCの正社員の求人はほとんど出回っていません。パート求人がほとんどです。
院内CRCの場合、まずは院内の看護師や薬剤師、臨床検査技師に募集をかけるので、院外への求人は出回らないのです。
そのため、今現在、院内CRCの募集がない病院や職場で働いている看護師が治験コーディネーターとして働きたい場合は、SMOに就職することがほとんどになります。
治験コーディネーターになるために資格が必要なの?
出典:http://www.clinicalresearchsociety.org/
治験コーディネーターという仕事は、特別な資格が必要なわけではありません。
治験コーディネーターになるためには、看護師の資格も必要がないのです。
ただ、看護師は医学的知識や薬学的知識を持っていて、患者さんのケアの経験があり、医師とのコミュニケーションも円滑にできる人が多いため、看護師から治験コーディネーターに転職する人は多いのです。
治験コーディネーターに転職するためには、特別な資格を取得する必要はありませんが、治験コーディネーターとして働きだしたら、資格を取得してキャリアアップしていきましょう。
治験コーディネーターのキャリアアップ資格には、次のようなものがあります。
日本SMO協会認定CRC | http://jasmo.org/ja/expart/license/index.html |
日本臨床薬理学会認定CRC | http://www.jscpt.jp/seido/crc/ |
SMONA認定CRC | http://www.smona.ne.jp/crc/index.html |
日本癌治療学会認定CRC | http://www.jsco.or.jp/jpn/index/page/id/1298 |
上級者臨床研究コーディネーター | https://www.hosp.go.jp/news/nw1-1_000249.html |
このような資格以外にも、日本病院薬剤師会主催のCRC養成研修会など様々な研修会が開かれています。
治験コーディネーターは未経験でも求人はあるの?
看護師の臨床経験が3年以上あれば、治験コーディネーターの仕事は未経験でも、採用してもらうことができます。
できれば、看護師として働いている時に、治験の患者さんの看護をしていると良いのですが、それも必須というわけではありません。
看護師免許は持っているけれど、看護師経験がなく、看護師の仕事が未経験という場合は、4年制大学、もしくは大学院の新卒以外は厳しいと思います。
看護師経験があれば、治験コーディネーター未経験でも、求人はたくさんありますが、その場合は給料はやや低めからのスタートになります。
給料や年収については、次に詳しく説明しますが、SMOは一般企業ですので、病院勤務よりも昇給率が良く、経験を積めば、給料は上がっていきます。
治験コーディネーターの年収はどのくらい?
治験コーディネーターの年収は、未経験の場合350~400万円前後が目安になります。
これは、夜勤をやっていた看護師さんの場合、治験コーディネーターに転職すると、給料が下がってしまうと思います。
でも、SMOは一般企業で、看護師よりも昇給率が良いですので、経験を積んでいくと、給料はどんどん上がっていきます。
経験が3~5年あると、年収は400~450万円程度になります。
大手SMOの平均年収は500万円前後となっていますので、治験コーディネーターの仕事を続けていけば、年収500万円は稼ぐことが出来るということになります。
日勤のみで土日祝日が休みという条件を考えると、年収500万円を稼ぐことができれば、意外と給料が高いと感じられるのではないでしょうか。
治験コーディネーターで年収を上げていくためには、まずは給料が安くても治験コーディネーターとして働き、経験を積んでいくことが大切です。
そして、先ほど説明したような資格を取得すると良いでしょう。
それ後に給料が良い大手のSMOに転職すると、年収の大幅アップを狙うことができます。
治験コーディネーターの仕事に、看護師スキルを活かせるの?
治験コーディネーターは、看護師とは違う仕事ですが、看護師スキルを活かしながら働くことがきます。
治験コーディネーターは看護師の資格が必須というわけではありません。
でも、治験コーディネーターとして働く上で、看護師の臨床経験はアドバンテージになるのです。
治験コーディネーターは被験者(患者)へ治験の説明をしたり、治験に対する不安のケアをしたりします。
これは、看護師時代に培った経験を活かすことができますよね。
また、病院の1日の流れを把握していること、医学的・薬学的知識を持っていること、医師とコミュニケーションを取ることに慣れていることなども、治験コーディネーターとして働く時には、とても役に立ちます。
被験者を選定する際には、カルテに目を通して、治験の条件に適合するかどうかを確認しますが、看護師はカルテを読み慣れているので、的確に被験者の選定ができるのです。
臨床開発モニターとの違いは?
同じ治験業界で働き、看護師からの転職者が多い仕事に臨床開発モニター(CRA=Clinical Research Associate)があります。
治験コーディネーターと臨床開発モニターは同じ治験のサポートをしながらも、立ち位置が異なります。
治験コーディネーターは病院やSMOに勤務して、治験を行う医療施設側に立って治験のサポートをする仕事です。
それに対して、臨床開発モニターは製薬会社やCRO(Contract Research Organization=開発業務受託機関)に勤務し、治験を依頼する製薬会社側の立場から治験をサポートします。
具体的には、医療機関と治験実施の契約を締結したり、治験が正しく行われているかのモニタリングをして、データを回収し、報告書を作成します。
治験コーディネーターに比べて臨床開発モニターは激務であり、残業も多いのですが、その分年収が高く、経験や能力次第では年収1000万円以上も狙えます。
残業や出張は多いの?
治験コーディネーターの残業は、どんなSMOに就職するかで大きく変わります。
平均すると臨床開発モニターよりは残業が少なめで、育児や家事と両立も十分可能です。
しかし、これはSMO次第なので、「治験コーディネーターは残業が多い!」、「いや、少ない!」とは断言できません。
残業が、ほとんどないというSMOもあります。
でも、忙しい時には深夜まで残業をしたり、自宅で仕事をしなければいけないSMOもあるのです。
そのため、治験コーディネーターの求人を探す時には、平均残業時間をしっかり調べましょう。
「治験コーディネーター=残業少ない」と思い込むと、痛い目を見ることになります。
次に出張についてですが、泊りがけの出張はほとんどありません。
地方のSMOに勤務する場合、東京の本社で重要な会議や研修がある時には、出張しなければいけないこともありますが、日々の業務内では泊りの出張はありません。
ただ、日帰りできる範囲内にある病院へは行くことがよくあります。出張ではなく、外勤ですね。
病院に勤める院内CRCは出張も外勤もほぼありません。
治験コーディネーターに英語は必要なの?
治験コーディネーターは、基本的には英語は必要ありません。
ただ、英語ができると、キャリアアップしやすく、給料アップを狙うことができます。
治験コーディネーターは、被験者(患者)や医師、その他の医療スタッフとの連携・調整が主な仕事ですので、英語を使わなくても仕事をすることは可能です。
でも、近年は複数の国や地域で世界共通の基準に従って行われる国際共通治験が増加してきています。
国際共通治験の担当になる時には、英語の治験実施計画書を読む必要がありますので、治験コーディネーターも英語ができたほうが、重要な仕事を任せてもらえるようになるのです。
離職率が高いって本当?
治験コーディネーターの離職率の正式な統計はありませんが、10%前後と言われています。
日本看護協会の「2015年病院看護実態調査 結果速報」(PDF)によると、看護師の離職率の平均は10.8%ですから、看護師の離職率とほぼ同じと考えて良いでしょう。
ただ、看護師から治験コーディネーターに転職した場合、採用後数ヶ月で退職したいと思う人が比較的多いのは事実です。
採用後すぐに辞めたい人は、次のような理由があります。
治験コーディネーターの仕事内容が想像と違った |
やっぱり看護師の仕事がしたい |
思ったよりもブラックな職場だった |
やりがいを感じない |
何もわからない状態でいきなり仕事を任されて辛かった |
事務作業や調整作業に自分は向いてないと思った |
利益を追求する会社の姿勢についていけなかった |
看護師から治験コーディネーターに転職する人はたくさんいますが、合う合わないがはっきり分かれる仕事です。
楽しくやりがいを持って働ける人がいる一方で、すぐに退職し、看護師の仕事に戻る人が多いのも実情です。
「日勤のみで土日祝日が休み、体力的にも楽」ということに惹かれて、治験コーディネーターの仕事内容をよく理解せずに転職した人は、転職後にギャップを感じてすぐに退職することが多いようです。
「日勤のみで土日祝日が休み、体力的にも楽」という条件は、看護師にとってとても魅力的であることは間違いありません。
でも、治験コーディネーターの仕事内容をきちんと理解して、その仕事に興味を持たないと、転職に失敗する可能性が高くなります。
また、医療機関は公共・福祉的な側面を持っていますので、医療機関で看護師として働いていると、「ビジネス」を意識する場面は少ないと思います。
でも、SMOで働くと、医療の発展に貢献する仕事ではあるものの、利益を生み出さないと会社として成り立ちませんので、利益重視の姿勢が求められます。
そのことを理解していないと、治験コーディネーターとして働くのは厳しいかもしれません。
治験コーディネーターの求人を選ぶ時の注意点は?
看護師が治験コーディネーターに転職する時の求人選びの注意点は、次の4つになります。
- SMOの得意分野を調べる
- 治験コーディネーターの看護師の割合を調べる
- 平均残業時間を調べる
- 教育体制を調べる
SMOの得意分野を調べる
SMOにはそれぞれ得意分野があります。
がん(オンコロジー)が得意なところ、糖尿病など内分泌系が得意なところ、循環器系が得意なところなどですね。
自分が興味のある分野の治験に強いSMOを選んでください。
治験コーディネーターの看護師の割合を調べる
次に、SMO内の治験コーディネーターの看護師の割合です。
治験コーディネーターは看護師からの転職組も多くいますが、それ以外にも薬剤師や臨床検査技師、理学療法士、管理栄養士などから転職する人もいます。
そして、どの資格を持った治験コーディネーターが多いかは、SMOによって異なります。
同じ看護師出身の治験コーディネーターが多いSMOに転職すると、職場に馴染みやすいというメリットがあります。
平均残業時間を調べる
平均残業時間については、先ほど説明した通りです。SMOによって残業時間は大きく異なります。
大手SMOに比べると、中小のSMOの方がブラック企業である確率が高いですが、一概には言えませんので、事前にきちんと調べておきましょう。
教育体制を調べる
教育体制も治験コーディネータ―の求人を選ぶ上で、とても大切なことになります。
治験コーディネーターは看護師経験を活かせる仕事と言っても、看護師とは全然違う仕事になります。
医学・薬学の知識だけでなく、関連の法律や倫理的概念の知識も必要になりますし、最初は治験コーディネーターの仕事の流れや詳細なども全く分かりませんよね。
きちんとした新人研修がないSMOに転職してしまうと、よくわからないまま仕事を任されることがあります。
そうすると、当然仕事をスムーズに進められませんから、「なんで仕事ができないんだ」と上司からは責められ、治験を行う医療機関や医師からは文句を言われ、精神的な追い詰められることになります。
そうならないためにも、教育制度が整っていて、治験コーディネーターとして働くために必要な研修を受けられるSMOを探すようにしましょう。
まとめ
治験コーディネーターの仕事内容やメリット・デメリット、向いている人、治験コーディネーターに関するFAQをまとめました。
治験コーディネーターは看護師経験を活かせる仕事であり、土日祝日がお休みで、日勤のみで、体力的にも楽という好条件の仕事になります。
ただ、看護師の仕事とは大きく異なります。
そのため、自分は治験コーディネーターに向いているのか、治験コーディネーターとしてやっていけるかをじっくり考えてから、治験コーディネーターになるかどうかを決めると良いでしょう。
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コメント
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