[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more.. ]
あなたの病院にリンクナースシステムはありますか?
リンクナースシステムは、イギリスで確立されたシステムです。
リンクナースは病院内の専門チームと現場の病棟をつなぐ役割をする看護師のことで、専門チームから専門的な知識や技術を学んで、それを所属する病棟に浸透させる役割を担っています。
当初は感染管理分野だけのシステムでしたが、現在は感染管理だけでなく褥創対策や栄養サポート、緩和ケア、退院調整、摂食・嚥下など様々な分野でリンクナースシステムが機能しています。
リンクナースになると、看護師として成長できる、やりがいを感じられる、キャリアアップへの道が開かれる、といったメリットがあります。
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リンクナースとは
リンクナースは、感染管理や褥創対策など病院内の各専門チームと現場の病棟をつなぐ役割を担う看護師です。
専門チームから最新の知識や技術を学び、それを病棟に持ち帰って、現場のリーダーとしてスタッフ1人1人に伝えて浸透させることで病棟のレベルアップを図り、病棟の問題を専門チームに報告して、病院全体のレベルアップにつなげていきます。
リンクナースは自分自身のスキルアップ、病棟のレベルアップ、病院全体のレベルアップにつながる仕事なのです。
リンクナースの役割
リンクナースは、病院内の専門チーム(委員会)と病棟をつなぐ看護師のことです。
専門チームや委員会からの情報や最新知識・技術を所属の病棟に伝え、浸透させることがリンクナースの役割です。
医療施設には、感染管理や褥創対策、栄養サポート、退院調整などの専門チームがあります。
しかし、専門チームのメンバーだけでは、各病棟に最新の技術や知識を伝えて浸透させることができません。
リンクナースは専門チームから専門的な技術や知識を学び、現場でのリーダーとしてそれを所属する病棟に伝え、病棟スタッフ1人1人に浸透させるという役割を担っているのです。
また、感染や褥創などの問題点が病棟で生じた時、それを専門チームに伝えることもリンクナースの仕事です。
リンクナースの活動
リンクナースの具体的な活動は、リンクナース会や委員会への参加、病棟内でのスタッフへの教育、病棟でのサーベイランスや評価、問題点の抽出などがあります。
これらの活動を通して、専門チームと現場である病棟をつなぎ、病棟スタッフのレベルを底上げして、患者さんに少しでも良い看護を提供するのです。
また、病棟の問題点をリンクナースから専門チームに報告することで、病院全体のレベルアップにもつながります。
リンクナース会や委員会は、月1~2回のペースで開かれ、そこで専門チームから最新の知識や技術を学び、また病棟での問題点を専門チームに報告し、解決法を一緒に考える機会になります。
そして、リンクナース会や委員会で得た知識や技術を、現場である病棟に持ち帰り、病棟内で勉強会を開く、率先して実践するなどの方法で、スタッフの教育を行います。
また、病棟内の問題点を抽出することもリンクナースの活動の1つです。
感染サーベイランスや褥創の発生件数などから、病棟での問題点を抽出し、それをリンクナース会や委員会で報告して解決方法を得ると共に、1つの病棟での問題を病院全体で共有することで、病院全体のレベルアップにもつながります。
リンクナースの目標
リンクナースの大きな目標は病棟スタッフのレベルを底上げして、患者さんにより良い看護を提供することになります。
具体的な目標は、リンクナースの分野や病棟の特徴によって異なりますが、感染リンクナースの目標の「一例」をご紹介します。
病棟内での針刺し事故を0件にする |
手洗いの実態調査を行い、適切な手洗い方法を指導する |
各ルートの定期交換が100%できる |
SSIサーベイランスの定着を図る |
日常業務内で適切な感染予防策を取ることができる |
このような年間目標を立てて、これらの目標を達成できるように年間の行動計画を作成して、リンクナースの活動を行っていくことになります。
リンクナースになるメリット
リンクナースになると、「看護師として成長できる」、「やりがいを感じられる」、「キャリアアップへの道が開かれる」という3つのメリットがあります。
看護師として成長できれば、将来の転職の際にも有利に働きます。やりがいを感じられれば、仕事へのモチベーションも上がります。
また、リンクナースで実績を積めば、認定看護師や専門看護師の資格を取得しやすくなります。
リンクナースになると、これだけのメリットがあるのですから、リンクナースにならないのはもったいないと思いませんか?
看護師として成長できる
リンクナースになるメリットの1つ目は、看護師として成長できることです。
リンクナースになれば、専門性を身につけられるだけでなく、他職種との交流や病棟スタッフへの指導などを通じて、色々な経験を積むことができます。
近年の傾向として、看護師も専門性を身につけることが求められています。
感染管理や褥瘡対策などの専門性を身につけることが出来れば、看護師キャリアの大きな武器になります。
リンクナースになると、その分野の最新技術や知識をいち早く身につけることが出来ますので、どんどん専門性が高まっていきます。
そして、感染対策や褥瘡対策、緩和ケア、栄養など、リンクナースになることで培われる専門分野は施設や診療科を問わずに必要とされるものです。
急性期病院のICUでも療養型病院でも、介護施設でも重宝されます。
また、リンクナースになるとリンクナース会や委員会等に出席することで、自分の部署以外の看護師や、その他の職種と交流する機会が増えますので、「病棟内・看護師」というだけでなく「病院全体、病院のスタッフ全体」という視野を持つことができます。
広い視野を持つことは、より良い看護をする上で、あなたを助けてくれるものになるはずです。
さらに、リンクナースは、担当の分野においては、病棟内でリーダーシップを取って、病棟スタッフに指導・教育をすることになります。
リンクナースになると、専門分野を作るだけでなく、リーダーシップの取り方や指導・教育方法も学び、身につけることができて、看護師として成長することができるのです。
どこでも役立つ専門分野を持ち、看護師としてレベルアップできれば、それがアピールポイントになりますので、今後あなたが転職する時にも、人気があって競争率が高い求人でも採用されやすくなります。
将来のことを考えて、今のうちにリンクナースの経験を積んでおくことは、決して無駄なことではないと思います。
今の経験と努力が、将来の高収入につながるのですから。
やりがいを感じられる
リンクナースになるメリットの2つ目は、やりがいを感じられることです。
リンクナースになると、ただ病棟での業務をやっているよりもやりがいを感じて、仕事へのモチベーションを高めることができます。
リンクナースになると、興味のある専門分野の新しい情報や技術をいち早く知り、深く学んでいくことができます。
興味のあることを学び、実践していくことが出来れば、看護師の仕事にさらに楽しさを感じて、やりがいを感じることができるでしょう。
さらに、リンクナースは年間目標を立てて、目標達成に向けて活動していきます。
この目標を達成できたら、わかりやすい形で努力の成果が現れますので、やりがいを感じることができるはずです。
キャリアアップへの道が開かれる
キャリアアップへの道が開かれることも、リンクナースのメリットです。
リンクナースになれば、病棟内・病院内のキャリアアップ競争でライバルたちに一歩リードすることができるので、認定看護師や専門看護師の資格を取得する際に、病院側からのサポートなど受けやすくなります。
最近はキャリアアップ志向の看護師さんが増えています。
ただ、認定看護師は半年間の研修を受け、専門看護師は看護系大学院の修士課程修了しなければいけませんので、経済的に大きな負担がかかるのが現実です。
その経済的負担を軽減するのが、病院の資格取得支援制度です。
認定看護師や専門看護師になるための研修中は、出張や出向扱いにして基本給は出してくれたり、学費の一部を負担してくれたりする病院が増えてきています。
このような支援制度を利用すれば、経済的負担は少なくて済みますので、認定看護師や専門看護師の資格を取得しやすくなります。
ただ、希望者全員が制度を利用したら、病院は破産してしまいますので、支援制度は誰でも利用できるわけではありません。
そのため、この支援制度を利用するためには、病院内のキャリアアップ競争に勝ち残らないといけません。
その競争に勝ち残るために、リンクナースの経験が大きな武器になるのです。
リンクナースとして活動していれば、病院内で実績を積むことができますので、キャリアアップ競争で大きくリードすることが可能です。
つまり、経済的な負担を最小限にしながら、認定看護師や専門看護師の資格を取ってキャリアアップするためには、リンクナースになることが必須条件と言えるでしょう。
リンクナースになるデメリット
リンクナースになるデメリットは、仕事が忙しくなること、人間関係の悩みが増えること、精神的なプレッシャーがあることの3つです。
リンクナースは専門的な仕事をすることが出来ますが、それに伴うデメリットもあります。
仕事が忙しくなる
リンクナースになると、日々の病棟での業務に加え、リンクナースの仕事が増えますので、仕事が忙しくなります。
看護師の人数に余裕があるところなら、リンクナースの仕事がある時は、病棟業務を免除して、リンクナースの仕事に専念させてくれますので、勤務時間内にリンクナースの仕事ができます。
でも、看護師が不足気味のところは病棟業務は普通に行いながら、残業してリンクナースの仕事をしなければいけません。
場合によっては、家に仕事を持ち帰らなくてはいけない事もあるでしょう。
リンクナースになると、仕事量が増えて、忙しくなる可能性があるのです。
人間関係の悩みが増えることもある
リンクナースはリンクナース会や委員会に参加しますので、他部署・他職種とのコミュニケーションが増えます。
また、病棟内ではリンクナースとして得た知識をスタッフに教育しなければいけません。
たくさんの人とコミュニケーションを取りながら働けば、それだけ人間関係のストレスが増えます。
病棟内でスタッフの教育をする時には、先輩看護師やお局看護師にも指導・教育しなければいけないのです。
今までは常識だったこと、お局看護師にとっては当たり前だったことを否定して、「それは古いので、こんな風にやってください」のように言わなければいけない事もあります。
そのため、リンクナースになると、スタッフから協力を得られないなど、病棟内での人間関係に苦労する場面が増えるかもしれません。
精神的なプレッシャーがある
リンクナースは、その分野に関して常に新しい知識・技術を取り入れないといけないので、精神的なプレッシャーを感じることがあります。
リンクナースはその分野では先頭に立ってみんなを引っ張っていく立場ですし、「この分野のことなら、リンクナースに聞けば良い」と思われる存在です。
感染リンクナースなら感染管理について、褥瘡対策なら褥瘡予防や処置について、NSTなら栄養管理について、「病棟の中で誰よりも詳しい」看護師である必要があるのです。
例えば、病棟でリンクナースとして指導をしている時に、先輩看護師に「それは違うと思うんだけど。そのやり方は、古いと思うよ。」と言われたら、リンクナースとしての立場がありません。
もちろん、先輩看護師だって常に勉強しているのですから、このようなシーンがあってはいけないと言うわけではありません。
でも、先輩看護師に何度も間違いを指摘されたり、リンクナースよりも知識が豊富な先輩看護師がたくさんいたら、病棟内での立場が微妙になって、リンクナースとしての活動に支障が出る場合があります。
リンクナースになると、常に勉強をし続けて、「病棟内ではその分野で一番詳しい人」であり続ける必要があるのです。
リンクナースになる方法
リンクナースになるためには、リンクナースシステムがある病院で働き、院内研修に参加して知識を深め、師長にリンクナースになりたいことをアピールしていく必要があります。
リンクナースになるためには、最終的に病棟で選ばれなければいけませんが、自分自身でスキルアップを図り専門性を高めていくこと、師長や周囲にアピールすることが、リンクナースになるための一番の近道なのです。
リンクナースシステムがある病院で働く
リンクナースになるためには、とにかくリンクナースシステムがある病院で働かなければいけません。
リンクナースの活動に興味がある、リンクナースになりたいと思っているのに、今働いている病院にそのシステムがなければ意味がないからです。
今働いている病院でリンクナースシステムができるのを待つよりは、既にある病院に転職したほうが早いですし、リンクナースとしてのノウハウを学ぶことができます。
リンクナースシステムは少しずつ普及し始めているものの、まだまだ新しいシステムですので、どの病院にもあるわけではありません。
大学病院や公立病院など大病院はリンクナースシステムを取り入れていることが多いのですので、リンクナースのために転職を考えている人は、大病院を中心に探してみると良いでしょう。
また、リンクナースシステムはあっても感染リンクナースだけ、褥創や緩和ケアはないということもありますので、自分の興味のある分野のリンクナースシステムがあるかどうかも必ず確認しておきましょう。
院内研修に参加しアピールする
あなたの興味のある分野のリンクナースシステムが機能している病院に転職したら、次はその分野の院内研修に参加し、師長にリンクナースを目指していることをアピールしましょう。
リンクナースシステムがある病院に転職しても、自動的にリンクナースになれるわけではありません。病棟や外来など所属部署で選ばれる必要があります。
ですから、リンクナースになるためには、その分野の専門知識を得て、「感染(褥創)のことなら○○さんに聞けば良い」と所属部署で言われるようにならなければいけません。
そのためには、まずその分野の院内研修に積極的に参加して、最新の知識や技術を身につけて、それを所属部署でどんどん活用していくようにしましょう。
また、同時に面談時などで師長にリンクナースになりたいことをアピールしておくと良いでしょう。
ただ、リンクナースになるためには、その分野に詳しければ良いというわけではありません。看護師としての総合力も問われます。
一般的な病棟業務はイマイチできないし、やる気も感じられないのに、リンクナースの分野だけは張り切っているという状態では、リンクナースにはなれないでしょう。
そのような看護師は、病棟内で信頼されませんから。
リンクナースになるためには、「看護師としての総合力+リンクナースの分野の知識」が必要なのです。
まとめ
リンクナースは感染管理や褥創対策などの専門チームと病棟をつなぎ、病棟スタッフのレベルを上げ、患者さんに還元していくという重要な役割を果たしています。
そして、自分自身のスキルアップにもつながりますし、キャリアアップする場合にもリンクナースの経験は有利に働くのです。
リンクナースシステムのある病院で働いて、専門性を高め師長にアピールしても、必ずリンクナースになることができると決まっているわけではありませんが、リンクナースの任期を1~2年としている病院がほとんどですので、地道に努力をしていれば必ずチャンスは巡ってきます。
そして、リンクナースになれば専門性を高められるだけでなく、リーダーとしてのスキルや人に教えるという指導力も身につけることができます。
専門性を身につけたい人、認定看護師や専門看護師などキャリアアップを目指している人、仕事にやりがいを感じたい人はリンクナースにチャレンジしてみてはいかがですか?
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コメント
[…] 専門的な知識を得られるだけでなく、キャリアアップへの道も開かれるというメリットがあります。 (引用:「リンクナースって何?リンクナースの役割活動と2大メリット」より要約) […]
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