[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more.. ]
病気や怪我で入院する場合、必ず1度はナースステーションを訪れる機会があると思いますが、ナースステーションとは一体どんな場所なのでしょうか?
あなたの入院生活にどのように関わってくる場所なのでしょう?
ナースステーションの設備基準や病院・診療科による違い、患者さんにとってのナースステーションの役割やナースステーションに関するFAQを知っておくと、入院中に困ったり悩んだりすることは無くなりますし、今までとは少し違った視点で看護師の仕事を見ることができるようになりますよ。
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ナースステーションとは
ナースステーションは病院が診療報酬を得る上で病棟に欠かせないものですが、ナースステーションの設備や面積が法律で細かく決められているわけではありませんので、病院や診療科によってはナースステーション内に処置台があったり、看護師のための休憩スペースが設けられていることもあります。
ナースステーションは看護師が仕事をする上での拠点となる場所ですので、看護師の仕事はナースステーションで始まり、ナースステーションで終わると言っても過言ではないのです。
ナースステーションの設備基準
看護師の詰所であるナースステーションは、法律で「こうでなければいけない」と面積や設備が決められているわけではありません。ただ、病棟には絶対に必要なもので、なくてはならないものなのです。
ナースステーションは建築基準法では特殊建築物の居室に分類されますので、建築基準法を遵守し、さらに消防法の条件を満たしている必要はありますが、面積や設備に関しては明確な決まりはありません。
でも、病院が患者さんが入院する病棟を作る上では、ナースステーションは絶対に必要な場所なのです。
病院の収入となる診療報酬の中には入院基本料がありますが、この入院基本料は病棟(看護単位)ごとに入院基本料の条件を満たす必要があります。その条件の中の1つをご紹介します。
各病棟の看護単位ごとに看護の責任者が配置され、看護チームによる交代制の勤務等の看護が実施され、ナース・ステーション等の設備を有し、看護に必要な器具器械が備え付けられていること
出典:基本診療料の施設基準等およびその届出に関する手続きの取扱いについて
つまり、病棟の中にナースステーションがないと入院基本料の条件を満たさず、病院は診療報酬を得ることができないのです。
ナースステーションは看護師の拠点
ナースステーションは、看護師が病棟で働く上での拠点となる場所です。看護師の仕事はナースステーションから始まり、ナースステーションで終わるのです。
そのため、ナースステーションは病棟の中央部に位置していることが多く、すべての病室への動線が短くなる場所に設置されています。
ナースステーションには、患者さんのカルテや看護記録、各種薬剤や治療・ケアのための器具・物品、モニター類、救急カート等が置いてありますし、その他パソコンや電話、ファックス、ナースコール、シャウカステン(バックに蛍光灯があるレントゲン写真を見るためのディスプレイ機器)等の設備もあります。
さらに、入院患者さんの一覧があったり、各勤務帯の看護師の氏名や患者受け持ち区分等の情報が掲示されているのもナースステーションです。
看護師が病棟で働く上で必要なもの、欠かせないものがすべて揃っているのがナースステーションなのです。
看護師の病棟での仕事はナースステーションで申し送りを受け、ナースステーションで必要物品等を準備して各患者さんのケアを行い、最後はナースステーションで申し送りをして終わります。
外科のナースステーションにあって内科にはないもの
外科のナースステーションにあって、内科のナースステーションにはないものがあります。それは、処置台です。
外科ではオペ後の傷を観察したり、洗浄することがありますが、ベッドサイドやナースステーションに隣接した処置室で行うだけでなく、ナースステーション内の処置台で行うこともあります。
ナースステーション内で処置をすると、必要物品を準備するのが楽ですし、すぐに看護記録を書くことができますので、効率が良いというメリットがあるのです。
内科は外科に比べると処置が少ないため、ナースステーション内に処置台を置いていないか、置いてあったとしても処置台として使用せずに荷物置き場になっていることが多くなっています。
個人病院のナースステーションにあって大病院にはないもの
個人病院のナースステーションにあって大病院にはないもの、それは休憩スペースです。個人病院のナースステーションの奥には看護師のための休憩スペースがあります。
大病院の場合は、休憩室や仮眠室はナースステーションとは別の場所にあるのですが、個人病院はスペースの関係上、ナースステーションの一部を休憩スペースにしていることが多いのです。
もちろん、患者さんからは見えない場所を休憩スペースにしたり、棚やカーテン等で見えないように工夫していますが、個人病院の場合は看護師は食事休憩や仮眠もナースステーション内で行っています。
患者さんにとってのナースステーションの役割
患者さんにとってのナースステーションの役割は、医師や看護師から説明を受ける場所、気軽に看護師に声をかけられる場所の2つがあります。
患者さんにとっては、ナースステーションに行けば必ず看護師がいるという安心感が得られますので、ナースステーションは看護師と患者さんをつなぐ場所と言えるでしょう。
医師や看護師から説明を受ける場所
入院すると、今の病状やこれからの治療方針、退院見込みの時期などを、医師から説明されますよね。そのような説明を受ける場所がナースステーションなのです。
病室でそのような説明をすると、周囲の患者さんに聞かれてしまう心配がありますが、ナースステーションなら周囲は医師や看護師などスタッフのみですので、個人情報保護の観点からもナースステーションは適切な場所です。
また、ナースステーションにはカルテや看護記録、レントゲン写真を見るパソコンやシャウカステン(バックに蛍光灯があるレントゲン写真を見るためのディスプレイ機器)がありますので、その点でもナースステーションは医師からの説明に適した場所と言えます。
もちろん、医師からの説明だけではなく、管理栄養士からの栄養指導や看護師からの健康指導、退院指導などもナースステーションで行います。
気軽に看護師に声をかけられる場所
ナースステーションには常に看護師がいます。そのため、患者さんにとって、ナースステーションは看護師に気軽に声をかけることができる、ナースステーションに行けば看護師がいると安心できる場所なのです。
「病室を訪れる看護師は業務に追われているので、なんとなく声をかけにくい。」、「ナースコールで呼ぶほどの用事じゃないんだけど。」など、なかなか看護師に声をかけにくいというケースもあると思います。
たとえば、「なんとなく夜眠れないから、睡眠導入薬をもらえないか相談したい」、「いつ頃、外泊できるのか知りたい」など、急用というわけじゃないけど、少し相談したい、聞いてみたいなどの時です。
そういう時は、ナースステーションを訪れれば、必ず看護師がいますので、気軽に声をかけて、相談することができるのです。
ナースステーションに関するFAQ
患者さんが入院するときに感じるナースステーションに関する疑問の中で多いものをピックアップしましたので、疑問とその回答をご紹介します。これを知っておけば、今後入院することがあっても、困ったり迷ったりすることはなくなるはずです。
ナースステーションへの差し入れやお礼って必要?
入院時にこれから看護師にお世話になるからとナースステーションに何か差し入れをしたり、退院時はお礼の品を持って行ったほうが良いのではないかと迷うことがあると思います。
でも、ナースステーションへの差し入れやお礼の品は一切不要です!差し入れをしなかったからといって、看護師が患者さんへの態度を変えたり、扱いを悪くしたりすることは絶対にありません。
最近は、「患者さんからの差し入れやお礼の品は一切お断り」と表示している病院も増えてきています。しかし、実際は患者さんからの好意を断り切れずに受け取ってしまうケースや病院もあるようです。ただ、完全に受け取りを拒否するところもあります。
そう言った場合は、せっかく善意でナースステーションに差し入れを持っていったのに、「病院の規則だから」と断られてしまって、あなたも看護師側も気まずくなってしまいます。
また、表向きは断りつつも「実際には受け取る場合」でも、もし患者さんから差し入れをもらったとしても、看護師から優遇される、扱いが良くなるということは一切ありません。
ですから、ナースステーションへの差し入れやお礼の品は必要ありませんし、持っていかないほうが無難でしょう。退院時に元気な笑顔を見せることが、看護師への一番のお礼になるのです。
ナースステーションにはいつでも勝手に入って良いの?
ナースステーションのドアは、基本的にいつも開いていますので、患者さんはナースステーションに用があるときは、声をかけずにいつでも入って良いと思うかもしれませんが、これはNGです。
確かに、処置のときや医師からの説明のときなど、患者さんがナースステーションに入る機会はたくさんあります。でも、看護師に声をかけずに勝手に入るのはダメなのです。
なぜなら、ナースステーションには入院中の患者さんの個人情報がたくさん置いてあるからです。
もしかしたら、看護師が患者さんの看護記録を書いている途中に、ナースコールで呼ばれ、緊急事態だったために看護記録をそのままにして、ナースステーションから出て行くことがあるかもしれません。
そのような状況でナースステーションに患者さんがふらりと入ってくると、個人情報を守ることができなくなってしまいます。
また、ナースステーションには危険な薬剤や器具がありますから、ナースステーションに用があるときは、必ず入り口で看護師やほかのスタッフに声をかけるようにしてください。
お見舞いに来た時、ナースステーションに声をかけた方が良い?
患者さんのお見舞いに来たときは、ナースステーションに声をかけたほうが良いのかどうかですが、これは病院によって規則が異なることもありますが、基本的にはナースステーションに一声かけるようにしましょう。
病院によっては、総合受付で面会者バッジをもらったり、ナースステーション前にある面会簿に氏名を記入する場合もあります。
毎日面会に来る人にとっては、面倒だと感じることもあると思いますが、患者さんの安全を守るために、病院や看護師が面会者を把握しておく必要がありますので、お見舞いに来たら、その病院の規則を守り、ナースステーションに声をかけてから患者さんの病室へ行くようにしてください。
ナースステーションに近い病室は病状が重いというのは本当?
ナースステーションに近い病室に入院になるのは、病状が重く、看護度が高い患者さんが多いのは本当です。
看護度が高く、看護師が頻回にその患者さんのもとを訪れてケアをするには、ナースステーションの近くの病室のほうが便利ですし、急変があったときでも、すぐに駆けつけることができるからです。
ただ、ナースステーション近くの病室は、重症な患者さん専用というわけではなく、病院から抜け出したり、消灯時間を守れないなど少し問題のある患者さんはナースステーション近くの病室に転室することもありますし、ただ単にナースステーション近くの病室しか開いてないので、一時的にそこに入院してもらうというケースもあります。
ナースステーションでお金や貴重品を預かってもらえる?
入院するときは、現金は必要最低限で貴重品は持ちこまないことが原則ですが、突然入院になったり、そのほかやむを得ない事情で現金や貴重品を持っている場合、ナースステーションで預かってもらいたいという人もいるかもしれません。
でも、ナースステーションでは基本的に現金や貴重品は預かりません。ナースステーションは不特定多数の人が出入りする場所ですので、現金や貴重品を預かるのは事故の元になるからです。
ほとんどの病院は、病室に鍵をかけられる引き出しがある床頭台を用意していますので、現金や貴重品はそこに入れて、自分で管理するようにしましょう。ただ、「現金は必要最低限、貴重品は持ち込まない」が原則になります。
病室に監視カメラが付いていてナースステーションで監視しているのは本当?
すべての病院ではありませんが、重症患者さんが入る個室には監視カメラが付いていて、カメラの映像をナースステーションでチェックしていることがあります。
これは、患者さんの急変にいち早く対応できるようにするためのもので、もちろん患者さんのプライベートや病室での様子を覗き見するためのものではありません。
監視カメラが付いているのは、血液内科のクリーンルームや精神科の急性期病棟の個室、ICUや救命病棟の個室などが多いのですが、このような病室に入院する患者さんは個室に入室する必要があるけれど、できるだけ看護師の眼が届くようにしたい、容態を観察しなければならない人が多いんです。
病室での様子を監視カメラを通してナースステーションで逐一チェックされているのはあまり気分が良いものではないと思いますが、患者さんの治療・看護のためにはどうしても必要なので行っています。
しかし、看護師には守秘義務がありますので、監視カメラの映像の情報は決して外部に漏らしませんから安心してください。
監視カメラがある病室に入院になる場合は、入室時に患者さんと家族に「監視カメラが付いていて、ナースステーションでチェックしていること」を説明されますから、もし監視されることに不安がある場合は、その時に看護師に質問するようにしましょう。
まとめ
ナースステーションの設備基準や役割、ナースステーションに関するFAQを知っておくと、もし今後入院することになっても、入院生活で困ることはなくなるはずです。
ただ、ナースステーションに関する規則は、それぞれの病院によって違いますので、その病院の規則に従うようにしましょう。
また、ご紹介したこと以外に、ナースステーションへの疑問があったり、入院生活中に何か困ることがあったら、気軽にナースステーションへ行って、看護師に相談するようにしてください。
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