[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more.. ]
常勤よりも気軽に働けるパートの場合、あまり細かい条件にこだわらず、何となく時給だけで求人を探している方も多いのでは?
でも、給料と仕事のハードさを良くチェックして、あなたのやりたい仕事、割のいい仕事を選べば、仕事が長続きするし、やる気もアップしますよ!
また、パートの場合は税金などの対策上、年収をいくらまで稼ぐか最初から決めて働かないと損をすることになりますし、通勤手当の支給額や有給休暇を使えるか、自分のスキルで即戦力になれるか、残業はあるかもきちんと確認して職場を選ぶ必要があります。
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おいしい看護師のパート職場
看護師がパート求人を選ぶときは、仕事内容や、やりがいだけではなく、「給料」や「仕事のハードさ」も重要な条件になります。
給料が高く仕事が楽だったら、割のいい職場、メリットの多い職場と言えますので、それほど仕事内容に興味がなくても、仕事が長続きしますし、仕事へのモチベーションが上がります。
逆に、給料が安いのに仕事がハードだったら、どんなにやりがいのある仕事でもすぐに辞めたくなってしまいます。
看護師がどんな職場でパートをするかは、あなたにとって割がいいか、メリットが多いかが重要になります。
パートの職場 | 給料は高いか | 仕事が楽か |
急性期病棟 | ★★ | ★ |
療養型病棟 | ★★ | ★★ |
外来 | ★★ | ★★ |
クリニック | ★★ | ★★ |
介護施設 | ★ | ★★★ |
訪問看護 | ★★★ | ★ |
訪問入浴 | ★★★ | ★★ |
デイサービス | ★ | ★★★ |
健診センター | ★★ | ★★★ |
美容外科・美容皮膚科 | ★★★ | ★★ |
厚生労働省の「平成26年賃金構造基本統計調査」によると、看護師のパート(短時間労働者)の平均時給は1,621円となっています。
「ナース人材バンク」調べだと、看護師のパートの全国平均時給は1,492円、東京都の平均時給は1,741円です。
上記表の「給与が高いか」は、平均時給以下の求人が多いものを星1つ、平均時給程度の求人が多いものを星2つ、平均時給以上の求人が多いものを星3つとしています。
「仕事が楽か」に関しては、医療行為が多く体力的にもきついものを星1つ、医療行為が少ない、もしくは体力的に楽なもの、または医療行為はほどほど、体力的にもほどほどのものを星2つ、医療行為が少なく体力的にも楽なものを星3つとしました。
星の数が多いほど割がいい職場となりますが、星の数とあなたの「やりがい」や興味を考慮して職場を選ぶと、あなたに合ったパートの職場を見つけることができるでしょう。
急性期病棟 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★ 楽=★ ≫
急性期病棟でパートをする場合、東京都だと時給1,700~1,800円のものが主流になりますので、急性期病棟でのパートの時給は看護師平均とほぼ同じとなります。
ただ、急性期病棟は重症患者さんが多く、急変も日常茶飯事ですし、緊急入院も珍しいことではありませんので、常にバタバタと忙しく、医療行為も多くなります。
また、介護士さんが配置されていないことが多いですので、体位交換や移動介助などの力仕事は看護師が行うことになり、体力的にもハードになります。
療養型病棟 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★ 楽=★★ ≫
療養型病棟のパート時給は東京都の場合、1,700~1,800円前後が主流ですので、療養型病院で働けば平均程度の時給を期待できます。
仕事内容は急性期病棟に比べて医療行為は少なめになりますし、介護士さんが配置されていることが多いので、体力的にも比較的楽に働けるでしょう。
外来 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★ 楽=★★ ≫
東京都の病院の外来だと、パートの平均時給は1,700円程度の求人が多いですので、給料は平均程度、もしくはやや少なめになります。
仕事は忙しいことが多いですし、医療行為もありますが、病棟のような力仕事は多くありません。
クリニック (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★ 楽=★★ ≫
クリニックのパートの平均時給は東京都の求人だと1,700~1,800円となっていますので、クリニックで働けば、平均的な給料を得ることができます。
仕事内容は採血や静脈注射などの医療行為はあるものの、病棟のような重症患者さんはいませんし、オムツ交換や入浴介助などの力仕事はありませんので、体力的には比較的楽であると言えるでしょう。
介護施設 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★ 楽=★★★ ≫
介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、有料老人ホームのパート時給は、東京都だと1,600~1,700円が主流ですので、看護師の平均時給よりはやや低めです。
ただ、仕事内容は利用者さんのバイタルチェックや服薬管理など健康管理が主になりますので、医療行為はほとんどありません。また、介護士さんがいますので力仕事は介護士さんの仕事で看護師は看護業務に専念することができ、体力的にも楽になります。
訪問看護 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★★ 楽=★ ≫
訪問看護のパートは時給制ではなく訪問1件ごとの歩合制のことが多いのですが、1件3,000~4,000円が平均で、時給換算すると2,000円程度になることが多いですので、訪問看護で働けば、平均以上の給料を期待できます。
仕事内容は医療行為は多いですし、1人で患者さんの自宅を周りますので、ハードな仕事と言えるでしょう。
訪問入浴 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★★ 楽=★★ ≫
訪問入浴のパート時給は東京都の場合、1,800円以上の求人がほとんどですので、訪問入浴でパートをすれば平均以上の給料を稼ぐことができます。
訪問入浴の仕事内容は、バイタルチェックや入浴介助になりますので、医療行為はありません。そのため、精神的には楽に働くことができます。
ただ、施設のように設備が整った場所ではなく利用者さんの自宅での入浴介助は想像以上に大変ですし、重い荷物を運搬しなくてはいけないこともありますので、体力的にはハードになります。
デイサービス (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★ 楽=★★★ ≫
デイサービスの時給は東京都だと1,600円前後が主流で平均以下になりますので、あまり高給与は期待できません。
デイサービスは、普段自宅で過ごす人に介護サービスやリハビリを提供するものですので、利用者さんの健康管理がデイサービスの看護師の仕事ですから、医療行為はほとんどありません。
また、介護士さんがいますので、介護士さんの仕事を手伝うことはあっても、基本的には看護業務に専念することができ、体力的には楽な仕事になります。
健診センター (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★ 楽=★★★ ≫
健診センターのパート時給は、東京都で1,600円前後が多くなっていますので、平均よりは少なめになります。
仕事は採血や血圧測定、腹囲測定などが主なものになり、力仕事はまったくありませんので、体力的には楽に働くことができます。
また、採血は医療行為に含まれるものの、命に関わるような医療行為はありませんので、精神的にも楽な仕事と言えるでしょう。
美容外科・美容皮膚科 (給料&楽かどうか)
≪ 給料=★★★ 楽=★★ ≫
自由診療のクリニックである美容外科・美容皮膚科のパートの平均時給は、東京都で1,800~2,000円が主流ですので、平均以上の給与を期待できる仕事です。
仕事内容は日帰りオペや医療機器を用いた施術を行いますので、オペや処置の介助など医療行為は多いですが、力仕事はありません。
看護師がパートで働く時の注意点5つ
看護師がパートで働く時は、年収をいくらにするのか、通勤手当は全額支給されるのか、有給休暇は使えるのか、自分のスキルに合っているか、残業はあるのかの5つに注意しなければいけません。
年収の設定額によっては税金や社会保険料の納付等で損をすることがありますし、通勤手当が全額支給されない場合も通勤代を一部自腹で支払うことになりますので損になります。
また、パートでも有給休暇をもらえますが、それをきちんと使えるのかどうかや、あなたのスキルで即戦力として働けるのかどうかも確認しておかなくてはいけないポイントです。
そして、パートでも残業をしなくてはいけない職場だと、パートのメリットがなくなってしまいますので、残業の有無も必ずチェックしておきましょう。
年収はいくらにするのか
パートで働く場合は、年収をいくら稼ぐか、最初から決めておく必要があります。年収を設定せずにパートで働くと、働き損になることがあるのです。
パートは、支払う税金が増える年収「103万円の壁」と社会保険料を納めなければいけない「130万円の壁」がありますので、あらかじめ年収をいくらにするのか、年収はいくらにすると損をしないのかをきちんと計算しておきましょう。
所得税や住民税、配偶者控除、社会保険の条件が複雑でわかりにくいと思いますので、一覧表で確認しましょう。
あなたの年収 | あなたの税金の支払い | 配偶者の控除 | 社会保険 | |||
住民税 | 所得税 | 配偶者控除 | 配偶者特別控除 | 扶養内 | 自己負担あり | |
100万円以下 | × | × | ◎ | × | ◎ | × |
100万円を超え、103万円以下 | ◎ | × | ◎ | × | ◎ | × |
103万円を超え、130万円未満 | ◎ | ◎ | × | ◎ | ◎ | × |
130万円以上、141万円未満 | ◎ | ◎ | × | ◎ | × | ◎ |
141万円以上 | ◎ | ◎ | × | × | × | ◎ |
旦那さんの年収にもよりますが、パートで103万円以上稼ぐなら、最低でも年収150万円を超えないと働き損になります。全国の看護師の平均時給1600円で働いた場合、年収150万円を稼ぐには月に約80時間働く必要があります。
1日4時間週5日勤務をすると、ようやく月80時間になりますので、パートで年収150万円を稼ぐのはなかなか大変ですから、103万円以下にするかそれ以上にするかは、世帯年収を考慮してきちんと計算するようにしましょう。
パート看護師の年収103万円の壁
看護師がパートで働く場合、年収が103万円を超えると、税金を支払わなくてはいけませんし、既婚者の場合は旦那さんが支払う税金も増えますので、損をすることになりかねません。
パート勤務をする場合、年収が103万円以下であれば所得税はかかりません。(給与所得控除の最低保障額65万円+基礎控除38万円の合計が控除されるので。) また、年収が100万円以下であれば住民税もかかりません。
つまり、パートでの年収が100万円を超えると住民税を支払うことになり、103万円を超えると住民税と所得税を支払わなくてはいけないのです。
さらに、旦那さんがサラリーマンの場合、パートの年収が103万円を超えると、あなたが支払う税金が増えるだけではなく、旦那さんが支払う税金も増えることになります。
あなたが年収103万円以下の場合、旦那さんは配偶者控除(所得税:38万円、住民税:33万円)を受けることができますが、103万円を超えると配偶者控除を受けられなくなり、旦那さんの支払う税金が増えることになります。
あなたの年収が103万円を超えても、141万円未満であれば、あなたの年収に応じた控除を受けられる配偶者特別控除を受けることができますが、あなたが支払うべき税金の金額は増えます。
年収103万円以下であれば、損をすることはまずありません。103万円以上であっても、あなたの収入が増えれば世帯年収が増えますので、支払う税金が多くなってもプラスになることもあります。
そのため、あなたの旦那さんの年収と支払うべき税金を計算して、どういう働き方が一番得なのかを計算しなければいけないのです。
パート看護師の年収130万円の壁
パートで働く年収の壁は103万円の壁だけではありません。年収130万円の壁もあります。
パートの年収が130万円を超えると、健康保険と年金は、その職場の健康保険と厚生年金に加入しなければならず、社会保険料を納めなければいけませんので損をする可能性があるんです。
また、130万円を超えなくても、勤務時間・勤務日数が常勤看護師の概ね4分の3以上の場合でも、職場の健康保険と厚生年金に加入しなければいけません。
あなたが今、国民健康保険と国民年金に加入しているのであれば、職場の健康保険と厚生年金に加入することは自己負担金が少なくなりますので得になります。
でも、旦那さんの扶養に入っている人は、要注意です。130万円以下であれば、「第3号被保険者」として旦那さんの会社の健康保険と厚生年金に加入していますので、社会保険料を納める必要はありません。
ところが、年収が130万円を超えた場合や常勤看護師の4分の3以上の勤務日数・時間のパート看護師は自分の職場の社会保険への加入が義務付けられますので、社会保険料を支払わなければいけません。
たとえば、年収が130万円の場合は月収が11万円程度になりますが、健康保険と厚生年金の社会保険料は合計で月15000円前後になります。さらに、住民税と所得税もかかりますので、手取りは9万円ちょっとにしかならないのです。
さらに、2016年10月からはこの社会保険加入の条件が引き下げられます。
●2016年10月からのパートの社会保険加入条件
1.週20時間以上の勤務
2.年収106万円以上
3.月収8万8,000円以上
4.雇用期間が1年以上
5.従業員数が501人以上
この5つの条件をすべて満たす人は、社会保険への加入が義務付けられますので、大学病院などの大規模病院でパートをしている人は注意しましょう。
通勤手当は全額支給か
パートの求人を選ぶときは、通勤手当は全額支給されるかどうかを確認しましょう。求人によっては、1日500円までなど支給の上限額が決まっています。通勤手当の支給の上限額が決まっていて、通勤代がその上限額を超えてしまったら、損をすることになりますので気をつけましょう。
たとえば、通勤手当は1日500円までしか支給されないけど、自宅から遠く往復で1,200円の交通費がかかる職場でパートをしたとします。
そうすると、差額の700円は自己負担をしなくてはいけません。パートで一生懸命働いても、700円分はただ働きをしているようなものですので、交通費が全額支給されないともったいないです。
また、マイカー通勤の人は、ガソリン代や駐車場料金は通勤手当として支給されるのかも確認しておきましょう。
有給休暇を使えるかどうか
パートには有給休暇がないと思っているかもしれませんが、パートでも一定条件を満たせば有給休暇をもらえますので、その有給をきちんと使えるのかどうかを確認しましょう。
もし、あなたが体調不良で仕事を休まざるを得ない場合でも、有給休暇を使えれば、給料が支給されますので、有給を使えるかどうかはパート求人を選ぶ上で大きなポイントなのです。
パート勤務でも勤務開始日から6ヶ月以上経過していて、その期間の勤務日の8割以上を出勤していれば、有給休暇をもらえるのです。有給休暇の日数については、週の労働日数や労働時間によって異なりますが、たとえ週1日の勤務だとしても有給休暇はもらえます。
看護師の職場は有給消化率が低く、有給を使うことはあまり歓迎されていないのが現実ですが、有給休暇は労働者の権利ですので、必要なときは有給休暇をきちんと使えるのかを確認しておきましょう。
自分のスキルに合っているか
パートの求人を選ぶ時は、あなたの看護スキルに合っているか、あなたの看護スキルで働けるかどうかをチェックしなくてはいけません。
パートでは即戦力になれる人を求められますし、常勤のようにプリセプターをつけてくれるわけではありませんので、即戦力として働けるスキルがないと、解雇される可能性もあります。また、解雇されなくても、即戦力になれないと辛い思いをするのはあなた自身なのです。
たとえば、健診センターの仕事は力仕事はありませんし、重症患者さんではなく健康な人を相手に働きますので、病棟勤務に比べると楽な仕事と言えます。でも、健診センターの看護師の仕事は、採血業務が中心になりますので、採血が苦手な看護師さんでは仕事にならないのです。
そのため、今まで経験したことがある分野や診療科、自分の得意なスキルを活かせる職場を選ぶと良いでしょう。
残業の有無
パートで働くなら、残業があるかどうかや月平均の残業時間を必ず調べておきましょう。パートなのに残業が多かったら、パートで働くメリットがなくなってしまいます。
パートは時給制ですので、基本的には定時で仕事を終えて帰ることができます。でも、職場の習慣や雰囲気によっては、「常勤だけでなく、パートさんも一緒に協力して残業を終わらせましょう。」とパートの看護師にも常勤看護師と同じように残業を強いる職場もあるのです。
本当に忙しかった日に、最低限自分の仕事を終わらせるために残業をするのであればまだわかりますが、パートなのに常勤と同じように残業をさせられたら、パートで働く意味がありません。
残業が多ければプライベートの時間は減りますし、育児や家事と仕事を両立させるのが難しくなりますので、パートで働くメリットがないのです。
まとめ
パートで働く時は、あらかじめ年収を決めておく必要がありますが、パートをする職場があなたの年収や、扶養内での働き方を気にかけ、それを守ってシフトを組んでくれるかどうかも重要なことです。
もし、職場の都合でシフトを増やされ、税金や社会保険料を支払う羽目になったら、損をしてしまうからです。
その病院やクリニックがどんな雰囲気なのか、パート看護師をどんな風に扱っているのかと言った内部情報は、転職支援サイトのコンサルタントに聞くと詳しく教えてくれるでしょう。仕事柄、多くの病院等の相当の情報が蓄積されています。また、シフトなどで希望がある場合は、あなたの代わりに聞いてくれたり、交渉をしてくれますので、求人探しも楽になります。
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