[著者: 平野雅子 (看護師 /保健師). more.. ]
「准看護師が廃止になる!」 准看護師さんなら、この准看護師の廃止問題を一度は耳にしたことがあると思います。
准看護師は正看護師と同じような仕事をしていて、看護スキルだって正看護師に引けを取りません。
正看護師よりもずっと頼りになる准看護師さんはたくさんいます。
でも、准看護師というだけで給料は少ないし、キャリアアップの道も閉ざされていますので、日々悔しい思いをしている人も多いでしょう。
その上、准看護師が廃止になるかもしれないとなったら、「悔しい」だけでは済まされません。
でも、准看護師が廃止なる前に何とかしなくちゃと思っていても、具体的にどうすれば良いのかわからないという准看護師さんも多いのではないでしょうか?
准看護師の廃止については、現状ではまだ何も決まっていません。また、資格自体が廃止されるのではなく、准看護師の養成だけが廃止になる可能性が高いですので、准看護師の資格が無駄になるわけではないと考えられます。
でも、まだ何も決まっていない状態ですので、将来的に准看護師の資格が廃止される可能性はゼロではありません。いつ廃止になっても困らないように、准看護師から正看護師になる方法をチェックしておきましょう。ここでは分かりやすく3つの方法全てを解説します。
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准看護師は本当に廃止になるのか
准看護師の廃止がささやかれるようになって、もう20年が経ちますが、いまだに具体的なことは何一つ決まっていません。厚生労働省と日本看護協会が推進していても、日本医師会が強固な反対姿勢を崩さないためです。
准看護師がいつ廃止になるかは決まっていませんが、将来的に准看護師の養成が全面的に廃止になったとしても、すでに資格を取得してる人は准看護師資格をそのまま使って働けると予想されています。
准看護師の廃止問題とその背景
准看護師の養成を廃止にして、看護職は正看護師に一本化されるべきという立場を取っているのは、厚生労働省と日本看護協会です。それに対して、日本医師会は准看護師の資格と養成を維持すべきという基本姿勢を打ち出して、”准看護師の廃止”に反対しています。
関係団体の利害が一致せず、妥協ポイントも見つけられないため、准看護師の廃止問題は廃止方向にも存続方向にも動かず、中途半端な状態が続いています。
准看護師は戦後の深刻な看護師不足に対応するため、短期間で必要最低限の看護知識・看護技術を身につけて臨床現場で働けるようにするための暫定的な措置として資格が作られました。
でも、現代では戦後間もない頃の深刻な看護師不足は解消され、准看護師という暫定的な措置は必要なくなったことを受けて、1996年に厚生労働省は「21世紀初頭の早い段階を目途に、看護婦養成制度の統合に努める」と提言しています。
また、日本看護協会は看護師の専門性が高まっていることや看護師の地位向上などを理由に、看護師養成を一本化して准看護師養成を停止するための活動を行っています。
これに反対しているのが日本医師会です。日本医師会は「准看護師養成と准看護師制度の維持」を主張しているんです。
准看護師の資格が作られた戦後ほどではないですが、現在でも看護師不足は続いています。看護師の資格を持った人は大病院で働くことが多く、医師が経営する個人病院やクリニックでは看護師不足が深刻で准看護師が主な戦力となっています。
また、准看護師は正看護師と同じ仕事をしているのに、正看護師よりも安く雇用できますので、日本医師会にとっては准看護師は必要な存在なのです。
厚生労働省と日本看護協会は准看護師廃止に賛成していて、1990年代から准看護師廃止の方向で動いていますが、日本医師会の強硬な反対があるため、なかなか廃止が決まらず「宙ぶらりん」な状態が続いているのが現状です。
准看護師はいつ廃止になるのか
准看護師の廃止問題は宙ぶらりんな状態で、准看護師がいつ廃止になるのかはまだ決まっていませんし、今すぐに准看護師が廃止になることもないでしょう。でも、ゆっくりではありますが、准看護師廃止へ動きつつあるのは確かなことです。
突然、准看護師の廃止が決まっても、慌てないように今から心の準備をしておいて、廃止が決まったらどうすべきかを考えておきましょう。
准看護師の廃止は、1996年に厚生労働省が看護師養成を一本化することを提言してから、約20年も具体的なことは決まらずに経過しています。
でも、2004年には経験10年以上の准看護師が正看護師になるための2年間の通信制の移行教育が開始になりました。神奈川県では2013年4月の入学を最後にそれ以降の准看護師養成を停止しています。このように、少しずつ准看護師の廃止は進んでいるのです。
廃止後の准看護師の身分は?
准看護師の廃止が決まった後でも、准看護師資格はそのまま継続されることが予想されます。准看護師は准看護師のままで働ける可能性が高いのです。
ですから、准看護師が廃止になったからといって、今持っている准看護師の資格が無駄になると言うわけではありませんので、安心してください。
准看護師が廃止になったのに、准看護師のまま働けるのは矛盾していると感じるかもしれません。でも、准看護師廃止問題についての厚生労働省と日本看護協会の考えをもう一度見直してみましょう。
●厚生労働省は、「21世紀初頭の早い段階を目途に、看護婦『養成』制度の統合に努める」としています。
●日本看護協会は「看護師『養成』への一本化を目指し、准看護師『養成』の停止に向けて」と述べているんです。
つまり、厚生労働省も日本看護協会も准看護師の資格自体を廃止しようとしているのではなく、准看護師の養成を停止して、看護師に一本化しようとしているだけなんです。
ですから、神奈川県のように准看護師の養成が停止の動きが全国に広まって、准看護師の養成がストップしたとしても、すでに資格を持って働いている准看護師さんの資格がなくなってしまうというわけでありません。
ただ、これは今現在の方針であって、この方針を基に准看護師の廃止問題が進んでいくと決まったわけではありません。
また、2015年に入って気になる動きが出てきています。介護や福祉、保育などの資格を一本化して、人材不足に対応しようと、厚生労働省が「介護・福祉サービス・人材の融合検討チーム」を設置しました。
この一本化しようと検討している資格の中に准看護師が含まれるかもしれないんです。この検討のモデルになっているフィンランドの「ラヒホイタヤ」は、准看護師や保育士、介護福祉士など10の資格が統一されたものです。
でも、この検討はまだ始まったばかりですし、厚生労働大臣は「中長期的課題」と述べていますので、ここ数年で実現することはないと考えられますが、将来的に准看護師が看護職ではなく、介護や福祉の仕事になる可能性がゼロではないことを示唆しています。
准看護師から正看護師になる方法
准看護師の資格をすでに持っている人は、准看護師の養成が廃止になっても、資格自体は有効でそのまま准看護師として働けると予想されていますが、それが確実というわけではありません。
そのため、万が一准看護師が廃止になっても困らないように、今のうちから正看護師になるための準備をしておきましょう。
正看護師になる方法は、准看護師の経験年数によって選択肢が異なりますが、2年間の通信教育、2年間の全日制、3年間の定時制の3つがあります。
2年間の通信教育(准看護師経験が10年以上)
准看護師から正看護師になる方法の1つ目は、2年間の通信教育を受けた後に国家試験に合格する方法です。これは、准看護師の経験が10年以上ある人限定になります。
通信教育であれば、働きながら正看護師の資格を取得することができますので、経済的な負担が少なくて済みます。
この2年間の通信教育制度は2004年に新しくできた教育制度ですが、臨地実習は紙上事例演習と面接授業、見学授業のみで、病棟での実習は免除になっています。
これは、10年以上の臨床経験があれば、正看護師と同じ臨床スキルがあると認められたためです。臨床では、准看護師は正看護師とほぼ同じ仕事をしていますので、当然の措置と言えるでしょう。
2年間の通信教育では65単位を取得しなければいけませんが、放送大学で取得した単位を65単位の一部として認定してもらえることもあります。
あらかじめ放送大学で受講しておけば、2年間の通信教育のスケジュールにゆとりができて、働きながらの資格取得がさらに楽になりますので、現在まだ准看護師経験が10年未満で、将来的に通信教育で正看護師の資格を取ろうと思っている人は、今のうちから放送大学で必要な講座を受講しておくのも良いでしょう。
現在はこの2年間の通信教育を受けられるのは実務経験が10年以上の准看護師に限られていますが、厚生労働省は実務経験の制限を5年程度に緩和する方針を固めていますので、今後は実務経験が5年程度あれば通信教育で正看護師を目指せるようになる見込みです。(2015/07/08加筆)
2年間の全日制教育
全日制の看護師養成学校に2年間通うことでも、正看護師の資格を取得することができます。これは、高卒の資格を持っている人は経験不問ですが、中卒で准看護師になった人は3年の実務経験が必要になります。
2年間の全日制で正看護師の資格を取るメリットは、准看護師の経験年数の制限がない、もしくは3年という短期間でOKであることです。
准看護師になってまだ間もなく、通信教育を受けられる経験10年にはまだまだ時間がかかるという人は、2年間の全日制の養成学校に通うことが最短で正看護師になるための道です。
ただ全日制ですので、常勤として働きながら学校に通うことはできません。週末のバイトや夜勤のバイト程度しかできませんので、経済的な負担は大きくなります。
3年間の定時制教育
養成学校の定時制に3年間通って正看護師の資格を取るという方法もあります。これも2年間の全日制と同じく、高卒なら准看護師の経験は不問、中卒なら3年以上の実務経験が必要になります。
2年間のカリキュラムを3年間かけて行うため、教育スケジュールにはゆとりがありますので、昼間の定時制であればアルバイトで働きながら学校に通うことができますし、夜間の定時制なら資格取得に理解がある職場であれば、常勤で働きながら学校に通うことも不可能ではありません。
ただ、3年間の定時制を行っている養成学校は少なく、特に夜間定時制は全国でも数えるほどしかありませんし、減少傾向にあります。
まとめ
准看護師の廃止は、まだ何も具体的には決まっていませんし、もし准看護師の「養成」が廃止になったとしても、准看護師の資格自体が廃止になるわけではないと予測できます。
でも、これはあくまで「予測」ですし、保育士や介護福祉士と資格が統合されてしまう可能性もゼロではありませんので、もし廃止になったらどうするかを今のうちから考えて準備しておきましょう。
キャリアや給料を考えたら、今から正看護師の資格取得を目指しても良いと思います。正看護師と同じ仕事をしていて同じ能力を持っているのに、准看護師は管理職を目指せませんし、給料も低いですから。正看護師になったら、准看護師廃止問題を気にする必要はありませんし、給料も上がり、キャリアアップへの道も開かれます。
ただ、問題は経済的なことだと思います。働きながら正看護師を目指すことができるといっても、学費を捻出するのは簡単なことではありません。
でも、准看護師から正看護師になる場合、厚生労働省の教育訓練給付制度を利用できるケースもありますし、日本看護協会の奨学金制度もあります。また、養成学校にも奨学金制度があるところが多いですので、一度調べてみると良いでしょう。
また、2年間の通信教育を受けられる経験年数が大幅に規制緩和されて5年程度になる見込みで、2015年度末には詳細が決まり、早ければ2017年度の入学者から適用されます。
そのため、現時点で実務経験が10年未満で正看護師になりたいと考えている准看護師の方は、2015年度末まで待って、2年間の通信教育の規制緩和の結果を考慮した上で、どの方法で正看護師になるのが一番良いのかを決めると良いでしょう。(2015/07/08加筆)
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